矢野経済研究所は,国内の照明市場を調査し,一般用途照明市場の概況,参入企業の動向,および将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
ここでは,2021年の一般用途照明市場(従来光源照明器具+従来光源ランプ+LED照明器具+LEDランプを合算,メーカー出荷金額ベース)は,前年比2.5%増の9,219億円と推計した。
LED照明は2011年の東日本大震災を契機とした電力需給逼迫を背景に,あらゆる市場において省エネ性能を高めた製品の需要が拡大する中で,省エネ効果が高くかつ長寿命であることから,需要が急速に拡大してきた。
一般用途照明市場では,従来光源からLED照明へのシフトが進み,LED照明市場(LED照明器具+LEDランプを合算)は伸びる一方,従来光源市場(従来光源照明器具+従来光源ランプを合算)は急減しているという。
また,2020年には新型コロナウイルス感染拡大による経済停滞の影響を受け,店舗や商業施設、宿泊施設などの新設・リニューアル工事の遅延・延期や企業の設備投資が滞り,一般用途照明市場は大きく減少したが,2021年以降はコロナ禍における行動制限等の緩和に伴い,市場は回復傾向にあるとする。
なお,照明業界においては,コロナ禍による工事の遅延・延期で,最も大きな痛手を受けた店舗や商業施設,宿泊施設などに強みを有する専業事業者の再編などの可能性も考えられるという。
また,空間全体の価値向上といったニーズの高まりから,照明器具単体ではなく,家電や音楽,映像,空調といった照明の周辺機器との連携を目的として,周辺領域の企業やIoTプラットフォームを運営するIT企業といった異業種の企業とのM&Aが進む可能性もあるとみている。
市場規模は,2022年の一般用途照明市場(従来光源照明器具+従来光源ランプ+LED照明器具+LEDランプを合算)は前年比5.2%増の9,701億円を見込む。また,2023年の同市場規模は同2.3%減の9,474億円,2027年は2022年比8.7%減の8,852億円になると予測する。
市場では,SDGsへの取組や,電気代高騰への対策として省エネ効果の高いLED照明が再度注目されているものの,価格競争の激化やフロー(年間出荷)ベースの数量での大幅な伸びは期待できないことから,将来的に漸減傾向で推移する見通しだという。
従来光源市場は今後も順次LED照明に置き換わることにより,減少傾向で推移していく見込みだが,一方,LED照明市場もかつてのような伸びはみられず,年々市場成長率は鈍化しているとする。
フロー市場でのLED化率(SSL[半導体照明]器具化率)は既に100%近くあり,フロー市場における数量面での伸長はないという。また,LED照明のコモディティー化による価格競争の激化により,金額ベースでのLED照明市場の伸びは引き続き難しい状況だとする。
一方,プラス要因もあるという。ストック市場におけるLED化率(SSL器具化率)は5割前後と推計されるため,残りの5割のリニューアル需要が期待できる。近年は,SDGsへの取組やカーボンニュートラルへの対応,そして電気代が高騰している中において電気代を削減するため,環境負荷が低く省コストで省エネルギー化が可能なLED照明が再度注目されているとする。
また,インバウンド(訪日外国人客)需要の再燃の兆しから,コロナ禍で打撃を受けた店舗や商業施設,宿泊施設などにおける新設・リニューアル需要や企業の設備投資意欲が回復傾向であることも,プラス要因の一つに挙げらるという。
基本的な市場トレンドについては,かつてのような伸びは期待できないものの,施設の新設・リニューアル需要は,今後も毎年一定規模以上発生するため,照明需要自体が急減することは考えづらく,中期的に漸減傾向で推移するものと予測している。