シャープ,シャープディスプレイテクノロジー(SDTC),東京大学は,次世代高効率ディスプレー技術として,発光スペクトル幅が狭くカドミウム(Cd)を含まない量子ドットによる,電流注入での発光とRGB画素のパターニングに成功した(ニュースリリース)。
液晶や有機ELに代わる次世代のディスプレー技術として期待される量子ドットは,発光効率が高く,粒子サイズの調整によって発光する波長を制御できるため色再現性に優れることに加え,発光スペクトル幅が狭く色純度が高い特性を持つことから,広色域のディスプレーとして好適な技術とされている。
カラーフィルターを用いる必要がないため電力のロスが抑えられ,電流注入で発光させることで,自発光型のディスプレーとなり,高コントラストの映像を表現することができる。このようなメリットがある反面,一般的な量子ドット材料にはカドミウム(Cd)が含まれるため,環境への影響が懸念されている。
今回研究グループは,スペクトル幅が狭くCdを含まない量子ドットによる,電流注入での発光とRGB画素のパターニングに成功した。Cdの使用は,欧州連合(EU)の定めるRoHS指令などで規制されている。この成果では,Cdを含まない量子ドットをRGB全てに適用し,パターニングした画素に対して電流注入で発光させることに成功した。
従来に比べてB(青)のスペクトル幅を約60%狭くした量子ドットを採用し,再現可能な色域を拡大することが可能となった。これにより,発光した光のロスを招くカラーフィルターが不要となり,低消費電力のディスプレーを実現することができる。
RGB画素のパターニングにはフォトリソグラフィ方式を採用した。フォトリソグラフィ方式は,集積回路などの製造に一般に用いられる方法であり,高精細化が可能かつディスプレーの大面積化に対応可能なことから,今後モバイル端末などの小型デバイスから,8K/4K大型テレビなどの大型ディスプレーまで,さまざまな用途や機器への展開が可能だとする。
この成果に基づき,東京大学では,量子ドットの高品質化に向けた基礎研究をさらに推進し,シャープおよびSDTCでは,低消費電力と高輝度・高コントラスト,広い色域を兼ね備え,中小型の高精細ディスプレーから8K/4K大型ディスプレーにまで対応する省エネルギーディスプレーの早期実用化に取り組み,2030年の日本における省エネ効果量として11.3万kL(原油換算)を目指すとしている。