産総研ら,射出成形と成膜でワイヤグリッド偏光素子

著者: sugi

産業技術総合研究所(産総研),三菱ガス化学トレーディング,住友ベークライト,伊藤光学工業,東海精密工業は,独自のナノ構造を利用した高機能偏光シートを開発し,さらに世界で初めて射出成形と成膜工程だけで作製できるワイヤグリッド偏光素子を開発した(ニュースリリース)。

従来型のワイヤグリッド偏光素子は後工程が必要で,小型部品や複雑な形状の部品の作製は難しい。また,優れた偏光度と透過率を維持しつつ,さらなる高温・高湿耐性や反射率の制御などに応えることも難しかった。さらに,反射型の偏光素子であるため用途は限定的で,コストも課題もあった。

産総研は従来のワイヤグリッド偏光素子の反射率を10分の1以下に抑えた耐久性の高い偏光シートを印刷技術によって開発しているが,可視光の単体透過率が10%程度だった。

また,射出成形用金型へのナノ構造形成が困難で,離型性や成形品への成膜性などに課題があり,射出成形によるワイヤグリッド偏光素子の製造は実現できていなかった。

研究グループは今回,断面が三角波形状の独自のナノ構造によるワイヤグリッド偏光素子を開発した。これにより,矩形構造と比較して優れた離型性と金型耐久性が得られ,熱ナノインプリント成形(ホットエンボス)だけでなく,射出成形で製造できることを実証した。

また,表面にナノ構造を形成しつつそのまま製品形状に形づくることができるため,小型偏光部品も簡便に製造することが可能になり,実装するための部品形状と偏光機能を同時に得ることもできる。

開発した偏光シートは熱可塑性樹脂であれば試作可能で,リフロー工程に耐える樹脂でも実現できる可能性がある。真空蒸着工程は汎用的な設備で実施でき,成膜後は後加工なしで偏光機能が得られる。

偏光シートは,可視域の波長550nmにおいて偏光度99%以上で単体透過率41%が得られ,近赤外域の波長1550nmにおいては理論限界に近い単体透過率47%を得た。

偏光部品では,波長1550nmでは99%以上の偏光度と44%の単体透過率を得たが,今後偏光シートと同等の光学特性が得られる見込みだという。高温・高湿試験(温度85 ℃,湿度85%)では2000時間を超えても99%以上の偏光度を維持し続け,外観の変化も見られなかった。

通常のワイヤグリッド偏光板は反射率が50%程度だが,同じ材料でも裏面反射率を10%以下に低減することができる。研究グループは,特に近赤外線領域での需要に応えるための技術開発を進めていくとともに「フィルム・シート形態」と「射出成形による部品形態」の偏光素子の研究開発を進めるとしている。

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