阪大ら,磁場でレーザー核融合の反応数を3倍に

大阪大学,米ローレンス・リバモア国立研究所,米マサチューセッツ工科大学,英インペリアル・カレッジ・ロンドン,米ロチェスター大学は,米ローレンスリバモア国立研究所の世界最大のレーザー装置,国立点火施設 National Ignition Facility(NIF)を使い,磁場を使った新しいレーザー核融合(磁場支援型レーザー核融合)の実証に成功し,レーザー核融合プラズマに外部から強い磁場を印加することで,核融合プラズマの温度が上昇し,核融合反応によって発生する中性子の数が3倍上昇することを計測した(ニュースリリース)。

レーザー核融合の最も単純な方式は,冷たい水素燃料を詰めたカプセルにレーザー光を照射し,カプセルを爆縮させるというもの。この爆縮により燃料が加熱され,燃焼プラズマのスポットが形成される。この「ホットスポット」が火種となって燃料全体が燃え,大きなエネルギーが放出される。

しかし,カプセルの表面に小さな欠陥が存在する,レーザーの照射タイミングが僅かに狂うなどの不具合があると,核融合反応はすぐに停止してしまう。もし燃料を高い温度にまで加熱できれば,許容可能なカプセルの欠陥やレーザーのタイミングの誤差の幅が広がり,このような細かな変化に対する核融合反応数の減少を緩和することができる。

近年,レーザー核融合においても,磁場が核融合燃料の温度を向上させることが明らかになっている。今回研究グループは,過去の実験よりもより複雑な設計ではるかに大きなエネルギーを生み出すNIFで実験を行ない,核融合点火に近いプラズマ状態においても,磁場が有効に機能することを示した。

磁場をかけると,燃料の温度が40%上昇し,核融合反応の効率が3倍になった。このような温度上昇は,大規模実験における磁場支援型核融合の最初の実証で,核融合反応の頑強性と核融合エネルギーの出力を向上させるための一歩だとする。

研究において,磁場はホットスポットを周囲の冷たい燃料から断熱する働きを持ち,加熱の効率を高め,最終的には反応の収率を向上させた。磁場が存在すると,プラズマ中の電子は磁力線に沿ったらせん状の軌道しかとれなくなり,その結果として,周囲の冷たい燃料への熱の流れが遅くなり,ホットスポット内に多くの熱が溜まることになる。

NIFでは,2021年8月にレーザー核融合で大きなエネルギーを生み出したが,それ以後は再現に苦労していた。その原因の一つは,核融合反応がカプセルの欠陥やレーザーのタイミングの誤差に極めて敏感に反応し,停止してしまうため。今回,磁場を加えることで,この「敏感さ」を緩和させることに成功した。

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