車載ディスプレー市場,自動車生産台数を上回る期待

矢野経済研究所は,車載ディスプレー部材世界市場を調査し,セグメント別の動向,参入企業動向,将来展望を明らかにし,今後の自動車生産台数と共に,主要部材である車載タッチパネル,ディスプレーカバー(前面板),OCA・OCR,反射防止フィルムの成長率を予測し,公表した。(ニュースリリース)。

それによると,近年の車載ディスプレー世界出荷数量(パネル数)は,コロナ禍の2020年には前年比マイナスとなったものの,下げ幅は自動車生産台数の減少率よりも小さく,2021年には回復したという。

世界の自動車生産台数は前年比マイナスが見込まれる2022年にも,車載ディスプレーは成長が見込まれ,その後もコンスタントな成長を続ける見通しで,自動車生産台数予測を上回る伸びを期待している。

車載ディスプレーの堅調な成長と歩調を合わせる形で,車載用タッチパネル(TP)やディスプレーカバー(前面板),ディスプレーカバー用反射防止フィルム,OCA・OCRなど主要部材の需要もプラス成長が続くものと予測する。

EV生産本格化やレベルアップした自動運転の導入などに伴い,車載ディスプレーの曲面・大画面・高精細化に対応するディスプレー部材が必要とされる領域は確実に広がっているとする。

一方で,マルチディスプレー,スーパーロングディスプレーなど,統合コックピットと呼ばれるピラーtoピラーサイズまで大型化したディスプレーでは,ドライバー向けの情報を表示するCID(Center Information Display)やクラスター(Instrument Cluster),助手席側に映像を映すPID(Passenger Information Display)が一体化するようになるが,PIDの表示でドライバーの注意が削がれ,脇見運転など重大事故につながりかねないリスクがある。

こうした中,ディスプレーに視野角を制御するスイッチャブル機能を持たせて,運転時のPID表示のみをOFFにする車載ディスプレーメーカーの技術開発が注目されているという。

車載ディスプレー部材メーカーでも,TPメーカーによるガラス加飾カバーとフィルムセンサーとを一体化したセンサー付きガラスカバーなど,これまで開発した製品を横展開することで,完全なスイッチャブルではないが,マルチディスプレーの複数ディスプレーの一部のみを操作し,運転中はPIDのみオフにしたいというニーズにも対応するとしている。

これまで車載ディスプレー部材の需要は,OEM(自動車メーカー)及び車載ディスプレーメーカーの動向に左右され,ディスプレー部材メーカーがコントロールする余地はあまりなかった。その中で,部材メーカー各社では長年に亘りユーザーであるTier1(一次部品サプライヤ)やOEMの厳しい品質基準を満たす製品を開発し,求められる機能・性能に確実にコミットしてきた。

こうした取組みは各社の技術力を磨き,車載ディスプレーの進化を支えてきたが,一方で受け身の事業展開になりがちであり,川下需要の鈍化が部材メーカーの事業実績の低下につながりやすいとする。

しかし,足元の自動車生産台数低迷の中でも,EVの普及や自動運転の導入などに伴う自動車のデジタル化への取組みは加速しており,今後は従来に無いまったく新しい機能を持つディスプレーの搭載が進むと予測している。

新開発のディスプレーについては部材や構成が固まり切っておらず,車載ディスプレー部材メーカーからの技術提案や共同開発の余地も大きい。

車載ディスプレー部材メーカーは,Tier1やOEMの技術革新に対応できる技術力・開発力を磨くとともに,自社が提供可能なソリューションを突き詰め,受け身ではなく攻めの姿勢での開発・提案で新しい需要を掘り起こしていくことが求められており,それこそが,車載ディスプレー部材メーカーの存在意義であり,将来にわたる市場の拡大・成長につながるものだとしている。

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