京セラ,白色レーザーと近赤光のナイトビジョン開発

京セラは,夜間,雨,霧など視界が悪い環境下でも危険要因になる可能性のある物体を高精度に認識することで安全な運転を支援する「車載ナイトビジョンシステム」を開発したと発表した(ニュースリリース)。

同社は,世界で初めて,白色光と近赤外光の光軸を一致させたヘッドライトで照射された物体を,車両搭載したRGB-IRセンサ(可視光と近赤外光センサ)で撮影,その画像データから独自のフュージョン認識AI技術により高精度な物体検出を可能とするシステムを開発した。さらに,独自の学習データ生成AI技術で学習を効率化し,コストと性能の両立を実現するとしている。

このシステムに用いる光源として,白色光と近赤外光を一体化し,同じ光軸から発光可能なヘッドライト(White-IR照明)を採用した。これにより,光の当たり方に差が出ず,経年変化も生じにくいため,より精度の高い認識結果の表示を可能にしたとする。

この一体型ヘッドライトは,KYOCERA SLD Laser, Inc. が独自開発した高輝度・高効率かつ小型パッケージのGaN製白色光レーザーを搭載する。ヘッドライト内の白色光をロービーム,近赤外光をハイビームなど,人や物に応じて配光を変化させることができるため,眩しさを抑えながらセンシングできる。また,一体型によりヘッドライトの省スペース化と車のデザインに自由度を確保した。

車両に搭載したRGB-IRセンサには,独自のフュージョン認識AI技術を採用。このAI技術は,可視光画像による認識結果と近赤外光画像による認識結果を単純に足し算するのではなく,可視光画像と近赤外光画像の両方から信頼性の高い領域を組み合わせて判断することが可能。これにより,視界の悪い環境下でも高精度に歩行者や車両を検出し,危険要因の検知と運転者への通知を行なう。

また,従来手法では,膨大な近赤外光の学習データの収集が必要で時間とコストがかかっていたが,開発した手法では,可視光の学習用画像から近赤外光の学習用画像を自動生成する学習データ生成AI技術を確立した。これにより,大幅な学習コストの削減と高精度な認識を両立したという。

同社は,このシステムを2027年以降に事業化することを目指し,研究開発を進める。今後も,路側機(Smart RSU)などとの連携によるインフラ側での交通環境の見守りシステムや,夜間の警備や配送などにおける小型低速モビリティへの応用などを進めていくとしている。

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