NECら,次世代レーザー情報に量子セキュア活用試験

日本電気(NEC),情報通信研究機構(NICT),京都大学,慶應義塾大学は,量子暗号技術と秘密分散技術を融合した量子セキュアクラウドシステムを適用した検証試験で,次世代レーザーの設計情報の最適化の処理・高秘匿伝送・分散保管に成功した(ニュースリリース)。

設計・製造工程などをデジタル化するスマート製造の実現には,サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムが必要とされているが,サイバー攻撃や,暗号を高速に解読できる量子コンピュータ技術の進展などの脅威が高まっており,機密情報を安心して流通・保管・利活用できるオンプレミスのシステムが求められている。

今回NECとNICTは,機密情報を安心して流通・保管・利活用できるサイバー空間を整備するため,製造分野への量子計算技術の適用可能性の検証を進めている京都大学および慶應義塾大学の間に,インターネット回線も用いて構成した量子セキュアクラウドシステムを構築した。

現在,京都大学および慶應義塾大学では,製造分野の最適化問題の具体的な例題として,将来のスマート加工用レーザー光源としての普及が期待されるフォトニック結晶レーザーの量子最適化問題に連携して取り組んでいる。

この連携では,京都大学で導出したフォトニック結晶レーザーの設計パラメータおよび性能評価プログラム(機密情報に相当)を,慶應義塾大学の次世代アクセラレータに伝送して解析を行なうが,今回,両大学の研究者が安全にデータの伝送および秘密分散保管が行なえるネットワークを構築した。

製造現場で使用されているレーザー加工機に革新を起こす可能性があるフォトニック結晶レーザーは,日本発の独創的な技術であり,その設計パラメータや解析プログラムは確実に守る必要がある。そこで今回,NECの回線暗号装置COMCIPHER-QをNICT,京都大学,慶應義塾大学の計3拠点に設置した。

専用回線を新たに敷設することなくインターネット回線上に,量子鍵配送装置で生成した暗号鍵を用いて仮想的な暗号回線を構築し,異なる組織の3拠点間で安全にデータを伝送できることを確認した。さらに,拠点間の伝送と同時にNICTからTokyo QKD Network上に形成した秘密分散システムへ接続し,秘密分散保管を行なった。

今回の検証試験では,次世代アクセラレータなど優れた計算エンジンを包含した量子セキュアクラウドシステムをユーザ環境で動作させることができた。研究グループはこの検証試験が,日本の製造業の国際競争力の向上に貢献できることを示したとしている。

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