富士キメラ総研は,化合物半導体と関連部材・装置の世界市場を調査し,その結果を「2022 化合物半導体関連市場の現状と将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,化合物半導体市場は本格的な成長期を迎えており,欧米を中心としたインフレやゼロコロナ政策による中国経済の成長鈍化,ウクライナ・ロシア問題の長期化など経済環境が悪化する中でも堅調な拡大がみられるという。
従来はSi半導体の代替という位置付けであったものの,Si半導体ではカバーしきれなかった領域での採用が始まっており,その重要性が再認識され,需要が増加しているとする。
光デバイスは,5G通信の導入と普及による基地局やデータセンターへのインフラ投資を受けて好調なほか,次世代ディスプレーとして注目されるMiniLEDとMicroLEDの開発が活発化しており,今後の市場拡大をけん引するとみている。
RFデバイスは,5G通信普及による基地局への投資に加え,長期的には6G通信のインフラ導入により堅調な伸びを予想する。パワーデバイスは,EVのモーターやインフラの急速充電設備に採用されることから,EV市場の拡大に伴い急成長するとみる。また,SDGsへの関心の高まりにより,スマートグリッド需要の増加が期待されるほか,衛星通信やマグネトロンなど工業分野での採用が増えるとみる。
関連材料・装置市場は,基板やLED用シリコーン封止材,有機金属,セラミックパッケージなどで構成され,7割以上を基板が占める。基板では,EVとスマートフォンの充電器需要が増加していることからGaN on Si基板とSiC基板の需要が増えているという。SiC基板の伸びが大きく,今後市場をけん引するとみている。
MiniLED,MicroLEDは次世代のLED技術・製品として注目されており,従来のLEDチップ・パッケージと比較してサイズが極めて微小となっている。2021年にMiniLED,2022年にMicroLEDの市場が本格的に立ち上がっているという。今後MicroLEDが市場をけん引し,2030年には3032年比41.6倍の1兆2,759億円を予測する。
MiniLEDは,チップサイズが50μm~200μm前後およびLEDディスプレー向けでは200μm~300μm品を対象とた。MiniLEDは,LEDディスプレー向けとバックライトユニット向けが中心。LEDディスプレー向けが,2021年時点で数量ベースでは6割以上を占めており,アプリケーション市場自体が好調なほか,高精細化に伴う搭載LEDチップ数も増加していることから引き続き伸びるとみている。
バックライトユニット向けの主なアプリケーションはTVやタブレット端末,ノートPC,車載ディスプレーなど。2021年にタブレット端末ではApple「iPadPro」,TVではSamsung EI.やLG EI.など主要なメーカーから採用モデルが発売されたことから本格的に市場が立ち上がった。
発色性などOLEDと比べメリットは多いものの,現状ではコストが極めて高いことからハイエンドクラスでの採用が中心となっている。今後,出荷数量の増加に伴いコストも低下していくことが予想され,中小型製品での採用も進むとみている。
中長期的にはLEDディスプレー向けを主用途に,TVや一部の車載ディスプレー向けなどが市場をけん引するとみており,2030年には2021年比5.1倍の1,559億円を予測する。
MicroLEDは,チップサイズが50μm以下のRGB自発光デバイスおよび24×58μm品を対象とした。主なアプリケーションはTVやLEDディスプレー,スマートグラス,スマートウォッチなど。TVはすでにSamsung EI.などから採用製品が発売されており,ラインアップが増加する2022年に本格的に市場が立ち上がるとみる。
ただし,依然としてMass Transfer技術をはじめ,欠陥補正やメンテナンスなど,生産技術が発展途上であることから製造コストが極めて高い。2022年時点では,一般消費者向けではなく富裕層向けのハイエンド製品に採用されており,普及期に入るには時間を要するとみている。
LEDディスプレーはシネマスクリーンなどで採用が期待されるが,生産技術・コストの観点から本格的な採用増加には至っていない。一方,大型と比較して生産技術・歩留まりの難易度が下がる小型ディスプレーを搭載するスマートグラスやスマートウォッチへの採用が注目されており,2023~2024年頃にそれら向けの需要が増えるとみる。
現在,競合品であるOLEDとの価格差が大きいことから普及へのハードルは高いものの,量産によるコスト低下が市場全体を押し上げる契機になると期待しており,2030年には1兆1,200億円を予測した。