広島大学と韓国成均館大学は,酸化銅(Cu2O)ナノキューブを厚み数ナノメートルの有機レイヤーで均一に被覆することに成功した(ニュースリリース)。
金属銅は金属の中で唯一CO2を炭化水素やアルコールに変換できる還元電極として知られており,二酸化炭素をメタンやエチレンに変換できるため注目を集めてきた。
一方で,日常的に目にする多結晶銅や銅の主要な結晶面からは,一酸化炭素,ギ酸を含む様々な程度に還元された含炭素生成物の混合物が生じる。また,水の還元による水素発生が競合するため効率が低下すること,過電圧が大きいこと,不純物に弱くCO2還元活性が容易に失活することなどが実用化の障害になっていた。
2000年代以降,特にCu2Oなど銅化合物によるナノ構造体を前駆体とした,エチレン発生を高効率・高選択的に行なえる触媒が開発されてきた。一方で,これらの触媒で選択性・効率が高まる理由は議論がされており,CO2還元の進行とともに銅が次第にその形状と,酸化数(主に Cu(I)と Cu(0))を動的に変えていく結果,活性を変化させ,高活性を発現するものや失活するものができるという点が明らかになってきた。
研究グループは,Cu2O表面自身が持つ有機物の結合生成反応(Copper-catalysed azide–alkyne cycloaddition,CuAAC)を表面での有機モノマーの連結に用いることで,有機物レイヤーを表面に成長させた。
この方法を用いて100nmのCu2Oキューブを有機モノマー溶液中で反応させたところ,キューブ表面に対して平らに数nmの有機膜が成長していることが分かった。またレイヤーの成長に伴い,Cu2O表面の疎水性が向上した。これらの有機レイヤーを修飾したCu2Oを炭素電極上でのCO2還元に用いると,水素発生が大幅に抑制され,高い効率でメタンが発生することが分かった。
有機レイヤーの作成の際に,Cu2O表面のもつ触媒活性を利用して有機物を連結することで,Cu2O表面に対して厚みの揃った有機レイヤーを作成することができる。このように薄く空隙の多い有機レイヤーを作成することで,レイヤーを介して分子の輸送や電子移動を行なうことが可能になる。
有機レイヤーで包んだナノキューブ触媒は,使用後も元の外形を保っていたことから,研究グループは,今後触媒の耐久性や活性表面積に対する優位性が期待できるとしている。