阪大ら,ビア底界面のナノボイド発生抑制に成功

大阪大学,ダイセル,奥野製薬工業は,奥野製薬工業のめっき技術「OPC FLETプロセス」を先端半導体基板(ビア径60μm)に適用し,内層銅と無電解めっき界面の断面を透過電子顕微鏡で詳細に解析した(ニュースリリース)。

昨今,先端半導体パッケージのサブストレートは一層の微細化が進み,配線層の3次元化と微細化が同時進行,マイクロビアのサイズは50μmを下回り始めつつある。ビア接続の微細化によって,信頼性が担保できない初期故障が世界で顕著になっており,影響は通信基地局,データセンタや宇宙航空機器,更には車載半導体など極めて広範囲に及んでいるという。

マイクロビアの断裂が引き起こすことから,”Weak-Micro-Via”問題(WMV)として,深刻な問題と捉えられている。WMV問題には様々な材料とプロセス因子が関与すると考えられるが,ナノスケールでかつ現象の複雑さから依然として原因が特定できておらず,製品の信頼性を担保する評価方法も存在しない。

研究グループは,マイクロビア底の数十nm厚さの無電解Cuめっき層周辺に初期からナノサイズのボイドが散在していることを突き止めており,このナノボイドの存在が最終製品に至るまでの熱履歴中に成長する可能性を見出していた。

一方,奥野製薬工業は先端半導体パッケージのビア小径化を想定し,無電解めっきの薄膜化及びビア底の内層銅との結晶連続性を達成できる「OPC FLETプロセス」を開発していた。

研究グループはナノボイド発生メカニズムを考察するため,ナノボイド発生部の分析を行ない,無電解層にニッケルの共析を確認した。従来のめっき浴にはニッケルが添加されているもののOPC FLETプロセスにはその特性上,ニッケルの添加はない。

ニッケルはめっき析出速度を向上させる効果があり,反応で発生した水素がナノボイドの起因になっていると考えた。これらの考察の基,OPC FLETプロセスを適用した先端半導体サブストレート(ビア径60μm)を試作した。

従来プロセスでは100nm以下のボイドを多数確認した一方,OPC FLETプロセスでは界面ナノボイドはなく,ナノボイド発生を大幅に抑制できることを実証した。更にこのナノボイド発生はめっき浴へのニッケルの添加が大きく関与している可能性が高いことも明らかになった。

この成果は,先端半導体のマイクロビア問題(初期及び経時故障)解決に大きく貢献するもの。研究グループは,先端半導体の信頼性向上への貢献が期待されるとしている。

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