東工大ら,ペプチドをグラファイト表面で自己組織

著者: sugi

東京工業大学と米Syracuse大学は,グラファイト電極表面上に触媒活性のあるヘミン分子とペプチドの複合分子膜を形成し,天然の酵素に匹敵する効率で電気化学触媒反応を実現することに成功した(ニュースリリース)。

これまでの研究から,特定のアミノ酸配列を有するペプチドが水溶液中でβシート構造を有するナノファイバーを形成し,触媒となる補因子との複合分子構造へと自己組織化することが知られていた。

研究では,それらのペプチドを電極となるグラファイト表面で自己組織化することに成功し,その表面に補因子としてヘミン分子を固定化することで触媒反応を可能とする電気化学界面を開発した。実際に,今回作製した過酸化水素(H2O2)の還元反応を試み,既報の酵素電極を用いたものと同等の反応効率を示すことを確認した。

酵素タンパク質を使用した電気化学電極は,酵素膜において標的分子と化学反応して電気信号に変換することが可能。化学エネルギーを電気エネルギーに変えることができるため,バイオ燃料電池や標的物質の濃度を知るバイオセンサに広く応用されてきた。

酵素タンパク質は生物が長い年月をかけて獲得した数百から数千のアミノ酸の配列によってその高い触媒活性を実現しているが,研究では,たった7つのアミノ酸からなるペプチドが酵素と同等の触媒活性を電極表面で実現した。

電気化学電極表面は,電圧が印加された人工的な環境であるため,生体環境中では安定に機能する酵素タンパク質を不安定にさせる可能性があるが,そのような人工的な環境で7つのアミノ酸からなるペプチドがその構造と触媒活性を維持していることは,新たな人工酵素電極の設計につながると考えられ,今後の電気化学とタンパク質工学の融合研究の大きな進展が期待できるとする。

この成果より,ペプチド自己組織化構造を利用して,酸化還元活性なヘミン分子をグラファイト電極表面に効率的に固定化できることが初めて明らかとなった。得られた分子複合構造体は,天然酵素に匹敵する効率で,一種および多種の基質反応において安定に触媒活性を有することが示された。

この研究ではグラファイト電極を使用したが,他の固体表面の修飾も可能であることが期待されるといい,研究グループは,近年発展が著しいナノ材料であるグラフェンを使用した高感度センサや,他のナノ材料の表面修飾にもこれらのペプチド・補因子集積技術が使用可能となれば,効率的で安価かつ環境に優しい,新しい電気化学触媒の幅広い応用につながるとしている。

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