阪大,皮膚に安定して密着する生体ドライ電極を開発

著者: sugi

大阪大学の研究グループは,伸縮性(最大16倍伸長)や透明性(可視光透過率85%以上)に優れ,皮膚に安定して密着する生体ドライ電極を開発した(ニュースリリース)。

従来の医療機器の装着で使われてきたゲル電極またはペースト状ウェット電極は,装着する手間やゲルの肌残りなどの課題があり,近年では,ワイヤレスの生体電位計測システムによる,皮膚の柔らかさを考慮した生体ドライ電極の利用が増えつつある。ただし,個体差(各体形)による電極の浮きや装着圧による痛みなど,長期使用での改善点がある。

さらに,ワイヤレスの生体電位計測システムが家庭で利用されるには,装着感や違和感が少なく,かつ高精度・低ノイズであることが望まれていた。

今回研究グループは,独自の高分子ネットワーク制御技術を用いて生体ドライ電極を開発し,それをゴムのように伸縮自在かつ透明な薄膜センサシートとして構築することで,感知しにくいワイヤレス生体電位計測システムを創出した。

この薄膜センサシートは,生体電位計測において,医療機器と同等の信号の質(0.1μVオーダー)を実現できる。生体ドライ電極については,透明なものを含めて多くの研究報告があるが,人体で最も小さな活動電位である脳波を精度高く計測できる電極例はなかった。

低ノイズな信号計測を実現するためには,有機材料と無機材料の融合によって得られた高い導電性が重要となる。具体的には,生体ドライ電極に利用している有機(高分子)材料は,極めて伸縮性の高いエラストマーと導電性高分子からなり,材料中でナノ〜マイクロメートルサイズの相分離構造を形成することが出来る。

この場合,形成された導電性高分子の凝集体が,厚み方向への特異的な導電性を発揮する。また,相分離構造は,エラストマーの2次元ネットワークを形成し,厚み方向の可視光透過性と粘着力,面方向の高い伸縮性を実現している。

さらに,薄膜センサシートでは,肉眼では見えないAg/Auコアシェルナノワイヤからなる無機(金属)材料を配線材料に利用しているため高導電。この配線のネットワークを強化する成膜技術を構築することで,従来報告されているものよりも耐伸縮性が高められているという。

この薄膜センサシートは,ターゲット部位の脳波,心電,筋電,脈波,血中酸素飽和度,血流などのリモート計測システムを構築できるという。研究グループは将来,人の動作を妨げずに,疾患を早期発見する遠隔システムの実現に期待がかかるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 東北大ら,Ge半導体に適した電極を発見し接合に成功

    東北大学と産業技術総合研究所は,層状物質であるテルル化ビスマス(Bi2Te3)薄膜とn型Geを反応させることで,非常に電気が流れやすい界面の形成に成功した(ニュースリリース)。 現在のスマートフォンやパソコンの性能を支え…

    2025.08.01
  • 東大ら,力を色で可視化するウェアラブルセンサ開発

    東京大学と深圳先進技術研究院は,色の変化で力を可視化するウェアラブルセンサを開発した(ニュースリリース)。 力を可視化するメカノクロミック素材は色々あるが,定量的に力を読み取ることができるものは多くない。 研究グループは…

    2025.05.08
  • 村田製作所,医療向けストレッチャブル基板を開発

    村田製作所は,体表に貼り付けて生体情報を収集する医療・ヘルスケア用ウェアラブル機器などへの活用を想定し,曲げ伸ばししても高い信頼性を保ちながら回路が動作する「ストレッチャブル基板」を開発した(ニュースリリース)。 近年医…

    2024.11.05
  • NHK技研,フレキシブルなイメージセンサーを開発

    NHK放送技術研究所(NHK技研)は,薄くて曲げられるシリコンイメージセンサーを開発した(ニュースリリース)。 従来の平面構造のイメージセンサーは撮像面と結像面ずれ(収差)が発生し,映像の周辺部でぼやけが生じる。また,撮…

    2024.10.23
  • ODG,人間拡張と光技術についての研究会を開催

    光設計研究グループ(ODG)は,第77回研究会「人間拡張における光技術の利用」を10月3日(木),板橋区立グリーンホールとオンラインにて,IOF(板橋オプトフォーラム)の一環として開催する(ODG HP)。 近年,様々な…

    2024.08.31
  • 横国大,AIでストレッチャブルデバイスの動作認識

    横浜国立大学の研究グループは,ストレッチャブルデバイスとAIを統合した柔軟な動作認識スマートシステムを開発した(ニュースリリース)。 近年,伸縮性を持つゴム材料や導電性材料を用いたストレッチャブルエレクトロニクス分野の研…

    2024.08.08
  • 【解説】伸縮可能な太陽電池が衣服を電源化する?

    理化学研究所,東京大学,中国南京大学,中国西安交通大学,スイス連邦工科大学チューリッヒ校は,高性能かつ伸縮可能な有機太陽電池を開発した(ニュースリリース)。 有機太陽電池の柔軟性を生かした応用を実現するためには,高い変換…

    2024.07.01
  • 東工大,ネットのように伸びる超薄型生体電極を開発

    東京工業大学の研究グループは,膜厚300–400nmのエラストマー薄膜の片側上に,単層カーボンナノチューブ(SWCNT)からなる繊維状の導電材料を薄く塗布した繊維ネットワークを形成することで,伸縮性と透湿性,自己接着性を…

    2024.06.24

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア