東京大学の研究グループは,ペロブスカイト/CIGSタンデム太陽電池として世界最高性能となる変換効率26.2%を達成した(ニュースリリース)。
ペロブスカイト太陽電池は,塗布製造できる安価な太陽電池でありながら,単結晶シリコン太陽電池に匹敵する高い変換効率を示し,軽量フィルム基板にも形成できることから次世代の高性能な軽量フレキシブル太陽電池として世界中で開発競争が進められている。
ペロブスカイト太陽電池の現状での世界最高効率は25%台だが,電動航空機,電気自動車,ドローンなどへの用途拡大を目指すには,軽量フレキシブル太陽電池で30%台の変換効率を実現する必要がある。これを実現するためには,CIGS太陽電池など,既存の軽量フレキシブル太陽電池と組み合わせたタンデム太陽電池とする方法が考えられる。
研究グループは,太陽電池の変換効率の飛躍的向上が期待できるペロブスカイト太陽電池とCIGS太陽電池を組み合わせたメカニカルスタックタンデム太陽電池の研究を進めてきた。有機金属ハライドペロブスカイトとCIGSは,いずれも高い光吸収性能を有し,従来のSi太陽電池の100分の1程度の膜厚で製造可能で,軽量フレキシブル化も容易。
ペロブスカイト太陽電池をタンデム太陽電池に用いるためには,従来の金属電極を,ITO(酸化インジウムスズ)などの透明導電層に置き換える必要がある。研究では,ペロブスカイト層にダメージを与えずに高性能なITOを積層する手法を開発し,高い性能を維持した状態で半透明なペロブスカイト太陽電池を作成することに成功し,半透明ペロブスカイト太陽電池としては世界最高性能となる変換効率19.5%を達成した。
さらに,この高効率な半透明ペロブスカイト太陽電池とCIGS太陽電池を組み合わせる事で,26.2%の変換効率を有するメカニカルスタックタンデム太陽電池を実現した。
研究グループはこの研究を発展させ,さらなる変換効率改善の研究を続ける事で,30%を超える軽量フレキシブル太陽電池を実現できる可能性があるとし,ビル壁面や大面積屋根などの建物設置のほか,電動航空機,電気自動車,ドローンなど高効率化と軽量化が求められる分野での活用や,新しい用途への展開も期待されるとしている。