東ソーは,同社と相模中央化学研究所所長の相原秀典氏が,科学技術振興機構より「第47回(令和4年度)井上春成賞」において「有機EL用電子輸送材料の開発」の受賞発表を受けたと発表した(ニュースリリース)。
井上春成賞は,大学等や研究機関などの独創的な研究成果をもとにして企業が開発し企業化した,我が国の優れた技術について研究者及び企業に対して贈られる賞。
有機ELディスプレーは,1997年に世界に先駆けて量産に成功した「日本発」のデバイス。高画質,薄型,フレキシブル性に特長があり,現在,様々な製品に使われている。しかし当初は,液晶ディスプレーに比べて消費電力が大きいという技術課題があり,普及できない時期があった。
有機デバイスの課題は,無機デバイスに比べ電気が流れにくい(電荷移動度が遅い)こと。特に高い電子輸送能力を備えた有機材料がないことが,有機ELディスプレーの消費電力が下がらない原因だった。
そのため,様々なアクセプター性骨格をもつ電子輸送材料が提案されていたが,同社らは「トリアジン骨格」に着目し,高い電子移動度をもつ電子輸送材料を開発した。現在は,スマートフォンを始め様々な用途に採用されているという。
相模中央化学研究所は,従来困難であった「トリアジン中間体の非対称合成法」を確立し材料開発の幅を広げた。一方,東ソーは有機EL用電子輸送材料の量産法を確立し,製品化を実現したとしている。