シャープは,実用サイズの軽量かつフレキシブルな太陽電池モジュールで世界最高の変換効率32.65%を達成したと発表した(ニュースリリース)。
CO2排出量削減や大気汚染対策の取り組みの一つとして電動車を導入する動きが加速しており,その効果を最大限に引き出すために再生可能エネルギーからの電力供給が期待されている。
また,電気自動車などの移動体に太陽電池を搭載することで,再生可能エネルギー由来の電力を直接供給でき,燃料費や充電回数の削減など,ユーザーの利便性向上が期待される。
これまでのモジュールは2枚のガラスで太陽電池セルを挟んだ構造だったが,今回,薄いフィルムで挟んだ構造に変更することで,軽量かつフレキシブルな特長を兼ね備えたモジュールを実現した。モジュールは実用化に向けて十分なサイズの約29cm×約34cm(面積965cm2)で,重量も約56g(0.58kg/m2)まで軽量化している。
同社の化合物3接合型太陽電池セルは,インジウム,ガリウム,ヒ素をボトム層とする3つの光吸収層を積み上げることで,効率的に太陽光を電気に変換できる独自の構造を採用している。
この構造のセルでは,2013年4月に小サイズ(面積1.047cm2)で37.9%の変換効率を達成しており,2016年には実用可能なサイズ(面積27.86cm2)の太陽電池セルを用いて,セルの集合体であるモジュール(面積968cm2)を作製し,当時の世界最高変換効率31.17%を達成している。
今回,2016年作製のモジュールから,化合物3接合型太陽電池セル(面積22.88cm2)の平均変換効率の向上(約34.5%→約36%)とモジュール内のセル充填率の改善を図ることで,実用サイズモジュール(面積965cm2)での変換効率を32.65%まで向上させることに成功した。なお,この成果はNEDOの「移動体用太陽電池の研究開発プロジェクト」によるもの。
同社は今後も,電気自動車や宇宙・航空分野などの移動体への搭載に向けて,引き続き太陽電池モジュールの高効率化および低コスト化に関する研究開発を進めるとしている。