富士経済は,半導体製造工程で使用される主要な材料の世界市場を調査し,その結果を「2022年 半導体材料市場の現状と将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,2021年は,半導体不足が深刻化し,様々なエレクトロニクス製品の生産に影響を及ぼした。2022年は,新型コロナウイルス感染症の流行による巣ごもり需要がひと段落し,半導体の不足は徐々に緩和するとみている。
ノートPCやゲーム機,家電製品などの特需は落ち着きをみせるが,5G通信やIoTの普及により通信インフラとしてのサーバー需要は底堅く,引き続き半導体の需要増加は続くとみる。
今後は,サーバーやノートPCなどの需要増加に加え,半導体の微細化,高層化といった要因が前工程材料の需要増加を促すとみる。また,3D-IC積層実装の実用化により後工程材料の付加価値化が進み,市場は長期的に拡大すると予想する。
工程別でみると,前工程材料では先端ロジック半導体の微細化や極端紫外線リソグラフィー(EUVL)プロセスの増加に加え,レガシー半導体の需要増加が続き,フォトレジスト,フォトマスクが好調だという。
また,3D-NANDの高層化が続いており,特に高アスペクト比の深孔加工に使用されるHFCエッチングガス,硫化カルボニルなどの伸びが顕著だとする。2023年から2024年にかけて200層以上の超高層3D-NAND型フラッシュメモリーが登場するとみており,中長期にわたって高層化に関連する材料が市場拡大に貢献すると予想する。
後工程材料ではウエハーの投入枚数および面積の増加により,バックグラインドテープやダイシングテープの需要増加が続くとみる。一方で,3D-NANDの高層化によりウエハー投入枚数の増加はやや抑えられると予想し,ダイアタッチフィルムの伸びは鈍化するとみる。
PC向けFC-BGA(Flip Chip-Ball GridArray)基板の需要増加でパッケージ基板銅張積層板材料が好調だが,2022年以降はPCの成長鈍化を受けて,スマートフォンやデータサーバー向けが増えるとみている。
注目市場として,フォトマスクとフォトレジストを挙げた。そのうちフォトマスクは,半導体製造工程のシリコンウエハー上へのパターン形成時に使用するものを対象としている。
2021年は,先端半導体からレガシー半導体までの幅広い線幅でフォトマスクの需要が増加したという。また,タイプ別では,EUVマスクはこれまで先端半導体向けが中心だったが,2021年より複数のメモリーメーカーがDRAM製造に導入したことで需要が増加し市場は拡大したという。
2022年以降も,半導体需要が増加することで,市場は好調が続くとみる。タイプ別では微細化による需要増加に伴う位相シフトマスクの増加や,バイナリマスクが先端品向けに高精細製品が開発され採用が進んでいるほか,EUVマスクは先端ロジックで採用数が増加しているとしている。
フォトレジストは,ウエハー上にパターン形成を行うフォトリソグラフィ工程で使用される各種の感光性材料を対象とした。2021年は,先端分野に加えレガシー半導体での需要が旺盛だとし,市場は拡大したとする。
タイプ別ではg線・i線,KrF,ArF,EUVのすべてのタイプで需要が増加し,中でもEUV用レジストの増加が著しかったという。2022年以降は,先端プロセスではArF液浸レジストからEUV用レジストへの置き換えが進むことにより,市場は大幅な拡大を予想する。
また,中長期的にはロジック・メモリーの中間配線層では,KrF用レジストからArF用レジストへの切り替えが進むとみており,大幅な市場拡大を予想している。