理研ら,SRXμCTで4億年前の脊椎動物の化石を観察

理化学研究所(理研),オーストラリア国立大学,国立科学博物館 ,高輝度光科学研究センターは,シンクロトロン放射光X線マイクロCT(SRXμCT)を用いて,脊椎動物パレオスポンディルスの化石の頭骨の形態を精密観察し,この動物が陸上脊椎動物の祖先と近縁であったことを発見した(ニュースリリース)。

パレオスポンディルスは,英国スコットランドにある中期デボン紀(約4億年前)の湖に堆積した地層から産出する化石種として知られている。最初に報告されたのは1890年だが,脊椎動物のどのグループに属するのかは謎だった。

今回研究グループは,頭骨が完全に岩石中に保存されている状態のパレオスポンディルスの化石を国立科学博物館の化石標本から探し出し,大型放射光施設「SPring-8」においてシンクロトロン放射光X線マイクロCT(SRXμCT)を用いて撮影した結果,高分解能・高コントラストの断層像の取得に成功した。

得られた断層像を組織学的に観察した上で,頭骨の3次元モデルを作成し,形態的特徴を精密に調べた。組織学的観察では,パレオスポンディルスの骨格組織は,硬骨魚類の肥大軟骨(軟骨が骨に置き換わる過程で生じる組織)に類似している。

そこで現生の硬骨魚(ハイギョ幼生)の肥大軟骨のSRXμCT断層像との比較を通して,類骨(鉱物化していない骨組織)や細胞小腔(軟骨細胞が収まっていた腔所),軟骨膜骨(軟骨周囲の鉱物化した骨組織)など骨格組織の詳細な特徴を把握し,軟骨膜骨がパレオスポンディルスの骨格に存在することを初めて明らかにした。

これまでの研究では,化石を物理的に研磨してその断面の画像を積層することで3次元モデルを作成したり,マイクロCT撮影をすることで,パレオスポンディルス頭骨の形態の観察が行なわれた例があった。しかし,この研究で微細組織レベルまで正確に捉えることが可能になったことで,頭骨を構成していた各骨格要素の境界(関節)を断層像の観察から明らかにすることに成功した。

パレオスポンディルス頭骨の形態的特徴は,脊椎動物の中でもハイギョなどの肉鰭類と類似しており,系統解析からは基盤的な四肢動物であると推定された。併せ持つ奇妙な特徴(歯やヒレ/四肢がない)は四肢動物の幼生にも見られることから,幼生的形態の進化的起源は4億年前までさかのぼる,非常に古い可能性が明らかになった。

研究グループはこの研究が,脊椎動物の陸上進出時におけるヒレから手足への変化などの劇的な形態進化が,幼生期を持つ系統の中で起こった可能性に,初めて光を当てることになったものだとしている。

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