岩手大ら,生きた化石の光合成酵素の反応速度を解明

岩手大学と東北大学は,生きている化石と呼ばれるオオトクサやトクサでは,光合成におけるCO2固定反応を担う酵素Rubiscoの反応速度が速いことを明らかにした(ニュースリリース)。

光合成によるCO2の同化と物質生産は,酵素RubiscoによるCO2固定反応により始まる。RubiscoのCO2固定反応は遅く,光合成の能力を支配する因子になっている。このため,Rubiscoは食料増産に向けた光合成能力強化のターゲットとなっており,世界中の多くの研究者が注目している。

Rubiscoの特性は多くの植物種で調べられており,一般的にRubiscoのCO2固定反応が速いほどCO2との反応のしやすさが低下するという関係がみられる。陸上植物の大多数を占める植物(C3植物)のRubiscoは,反応速度は遅いものの基質親和性が高いものとなっている。

その理由は,光合成の際にCO2が大気からRubiscoまで受動的に移動するため,Rubiscoの周囲のCO2濃度が低く,反応速度よりも基質親和性が優先されたためであると考えられている。これとは逆に,トウモロコシやソルガムなどの,葉内でCO2を濃縮する機構を有している植物(C4植物)のRubiscoは,基質親和性は低いものの反応速度の速いものとなっている。

Rubiscoの特性が多くの植物種で調べられているとはいえ,まだ調べられていない植物種は非常に多く,陸上植物ではその割合は99%以上となっている。その原因のひとつは,Rubiscoの酵素活性の測定が難しい植物種が少なくない。そこで研究グループは,Rubisco活性測定の方法を改良したうえで,これまでにほとんど注目されていなかった,シダ植物のRubiscoの特性を調べることとした。

葉に含まれるポリフェノールや多糖類による妨害がRubiscoの活性測定で特に問題となる。そこで,Rubiscoを葉から抽出する際に,これらの夾雑物を吸着する添加物を多量に含む緩衝液を用い,抽出したRubiscoを選択的に沈殿させてから用いることで,夾雑物による影響を抑え,より広い植物種におけるRubiscoの活性測定を可能とした。

調べたシダ植物の中で,陸上植物の進化において早い段階で出現し,生きている化石と呼ばれるトクサ科のオオトクサやトクサでは,RubiscoのCO2固定反応の速度がトウモロコシやソルガムといったC4植物のRubisco並みに速いことがわかった。CO2への基質親和性もC₄植物と大きく変わらなかった。

研究グループは,この研究の成果は,将来的な光合成能力強化のために有用であるとしている。

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