名工大,鱗で最高発光効率のカーボンナノオニオン

名古屋工業大学の研究グループは,魚の鱗を活用してマイクロ波熱分解法により,超高発光効率のカーボンナノオニオンの合成に成功した(ニュースリリース)。

カーボンナノオニオンは数層のフラーレンで構成された,特異な構造を持つカーボンナノ材料の一種類であり,無毒で資源量の豊富な元素で構成された材料かつ高い電気伝導率,熱変換率および比表面積を持つ。

しかし,既存のカーボンナノオニオンの合成手法は,サイズ制御が難しい,高温,真空,もしくは長い反応時間が必要,高い原料費や触媒利用による製造コスト,後処理に化学溶媒を用いる,表面修飾の後処理が必要といった問題がある。

研究では,魚の鱗から抽出したコラーゲンを原料として,シングルモードマイクロ波による電場加熱により,コラーゲンの自発的かつ急激な温度上昇および熱分解により,数秒でカーボンナノオニオンを合成させることに成功した。

得られたカーボンナノオニオンのサイズは〜20nm前後で,多層なフラーレンで構成され高結晶性であることがわかった。また,合成されたカーボンナノオニオンの表面は,カルボンオキシル基と水酸基が選択的に修飾されていることを確認した。

合成したカーボンナノオニオンは,後処理せずにそのままエタノール中に分散させることができ,紫外線励起による高輝度な青色発光を示す。400〜500nm波長での発光中心を示し,励起波長(300〜400nm)に依存する異なる表面状態起因の発光と,励起波長(250〜200nm)に依存するπ-π遷移による発光の二種類の発光成分で構成されている。

励起波長が350nmの際の絶対量子収率は40%と,従来の合成手法で合成されたカーボンナノオニオンより10倍高い,世界最高の値を示した。この高い量子収率は,コア部分の高い結晶性と,効率的な表面修飾より得られた結果と考えられるという。

また,表面にカルボンオキシル基と水酸基が豊富に存在することにより,様々な極性溶媒に簡便に分散させることができ,また溶媒置換後の発光および量子収率の安定性も確認した。

カーボンナノオニオンの水分散液を用いて,水溶性の熱可塑性樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)と混合し,フレキシブル薄膜を作製したところ,カーボンナノオニオンの分散液と同じ青色発光および3D発光スペクトルを示した。またカーボンナノオニオンとPVAの混合液をUV-LEDチップに塗装することにより,青色発光LEDの作製にも成功した。

このカーボンナノオニオンは次世代固体光源および発光デバイスへの応用が期待でき,原料も魚鱗由来のコラーゲンであることから,研究グループはSDGs達成に貢献する機能性ナノ材料および次世代光源の創成への新たな展開につながるとしている。

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