矢野経済研究所は,世界の空飛ぶクルマ市場を調査し,地域,国別や参入企業各社の動向,将来展望などを明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,近年,米Uberが事業構想「Uber Elevate White Paper」を発表し,空の移動に向けて積極的な開発を進めたことを発端に空飛ぶクルマ市場の動きは活発化し,具体的な事業化ステージが見えつつあるという。
小型航空機の認知度が高いことや実証試験のサイクルが早いことから,欧州や北米,中国の3地域・国が先行しており,2025年を起点に多くの事業が始まり,急激な機体導入やインフラ整備が進む見込みだとする。
調査ではこれらの状況に対して,日本,その他地域を加えた世界5地域・国で,それぞれで起こり得る内容を加味し,2025年の空飛ぶクルマ世界市場規模を146億2,500万円と予測した。ただ,これはこの先の加速的な成長期への入り口に過ぎないと考えられるという。
日本国内での空飛ぶクルマ事業化を2025年とみているが,これは同年に大阪府で開催される「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」が大きな要因だとする。経済産業省と国土交通省では「空の移動革命に向けた官民協議会」を設置しているが,同様に大阪府では大阪・関西万博に向けて「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」を設置し,特に同府や周辺地域を含めた整備も併せて関連事業者が集まり,積極的な意見交換や検討会を進めている。
そこではユースケースを踏まえた運航プランの検討や課題・論点の整理,具体的な行動計画を取りまとめ,2022年3月23日には大阪版ロードマップを公表している。これをもとに,大阪・関西万博とそれ以降の空飛ぶクルマ実装に向けて更なる事業成長に繋がるような動きを高めていく方針となっているという。
空飛ぶクルマの実用化は,単なる空の移動手段としてではなく,観光や競技用といった従来の交通手段と比較して様々な業界を巻き込む形での付加価値も生み出し,関係する産業・業界と併せて双方が同時に成長・拡大していく可能性があるとする。
事業化の必要条件である「社会受容性」「機体開発」「地上インフラや管制システム」「法規制」が整備されていくことで,2030年以降2035年までには先行する欧州や北米,中国以外の日本やその他地域においても新しい移動手段としてより定着していき,利用層が急激に多くなることから,急成長する見通しだという。
そして,2040年代に入ると5地域・国全体で公共移動手段需要に加えて,個人所有の需要が新たに増加するなど,更なる市場拡大が期待できる。これらを含め,市場が安定するであろう2050年の空飛ぶクルマ世界市場規模は120兆円超へ成長すると予測した。
空飛ぶクルマ市場の成長には,機体の更なる技術開発や社会受容性を高めることなど,課題は多岐に渡る。しかし,そのいずれも対処不可能なものではないため,これらと併せて利用者になる我々が新しい空の乗り物に興味を持ち,受け入れやすい・発展されやすい環境を作ることも有効な視点となるとしている。