東北大,インフルRNAと結合する蛍光プローブ開発

著者: sugi

東北大学の研究グループは,IAV RNAプロモーター領域に対して,優れた結合能と蛍光応答能を併せ持つ分子プローブ(tFIT-DPQ)を開発した(ニュースリリース)。

インフルエンザウイルスのIAVは数年から数十年ごとに大流行(パンデミック)を引き起こす。抗インフルエンザウイルス薬が効きにくい耐性ウイルスも出現しており,新たなインフルエンザウイルス対策技術が重要となってきている。

インフルエンザウイルスが持つゲノムRNAにおいてRNAポリメラーゼによる転写と複製の両方に直接関与する領域(プロモーター領域)は遺伝子変異のリスクが低いため,診断および薬剤における重要な標的として注目されている。

今回研究グループは,IAV RNAのプロモーター領域に優れた結合能と蛍光応答能を併せ持つ分子プローブを開発した。プロモーター領域はインターナルループ構造と複数のミスマッチ塩基対を含む二重鎖構造を取るが,こうした複雑な高次構造を認識する分子設計はほとんど確立されていない。

研究グループは,これまでに開発を進めてきたRNA二重鎖と三重鎖構造を形成し蛍光応答を示すThiazole orange(TO)擬塩基含有ペプチド核酸(tFIT)に,インターナルループ構造を認識する小分子(DPQ)を連結させたコンジュゲート型分子(tFIT-DPQ)が生理条件下においてプロモーター領域を強くかつ選択的に認識し,蛍光強度が著しく大きくなることを見出した。

一般に三重鎖形成に基づく分子プローブでは酸性での利用に限定されているが,今回の分子設計ではDPQ部位をアンカーとして機能させることで中性pHにおいても十分に有用なプローブ機能(解離定数Kd=107nM,83倍の蛍光強度増大)を実現した。

tFIT-DPQはIAVに感染した細胞から抽出したRNAに対しても有用な蛍光応答を示し,60ng/mL程度のRNAでIAVインフルエンザ感染の有無を解析できるという。この検出感度は過去に報告された分子プローブより2桁優れている。

現時点ではPCR法と比べて感度は劣るものの,tFIT-DPQは核酸増幅することなく,ウイルスRNAを含む検体と混ぜて測定するのみで即時診断が行なえる検査薬としての可能性を秘める。

またtFIT-DPQは,IAV RNAプロモーター領域との結合・解離に基づく大きな蛍光強度変化を示すことから,蛍光指示薬(インジケーター)として利用することで、様々な構造を持つ化合物のプロモーター領域結合能を簡便かつ安価に評価できることを実証した。

研究グループは,この分子プローブが,今後の新型インフルエンザウイルスに対する診断・予防・治療に貢献するとしている。

キーワード:

関連記事

  • 東大など、世界初の光学マイクロニードルデバイスを開発

    東京大学、東京科学大学、英Bath大学、ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)は、従来の酵素測定法の欠点を解決する光学マイクロニードルデバイスを世界ではじめて開発した(ニュースリリース)。 採血不要の臨床検査を可能…

    2026.01.14
  • 公大と兵県大、有機ホウ素錯体の蛍光色変化を超高圧下で観測

    大阪公立大学と兵庫県立大学は、分子内π-π相互作用が、圧力に対する蛍光色の可逆的変化(PFC)に与える影響を調べるため、シクロファン部位をもつ有機ホウ素錯体pCPHとpCP-iPrの単結晶をダイヤモンドアンビルセル(DA…

    2025.12.26
  • 理研、光でがんを選択的かつリアルタイムに可視化

    理化学研究所は、がん細胞で過剰に産生される代謝物アクロレインを利用し、がん細胞内でのみポリマーを自発的に合成できる革新的なポリマー化技術の開発に成功した(ニュースリリース)。 生体関連化学分野において、高分子材料は薬物送…

    2025.12.23
  • 新潟大,蛍光分光法で無花粉スギの簡易識別法を開発

    新潟大学の研究グループは,蛍光分光法を用いた無花粉スギの簡易識別技術を開発した(ニュースリリース)。 無花粉スギの花粉を飛ばさない性質は,雄性不稔遺伝子と呼ばれる1つの潜性遺伝子で決まる。そのため,両親から雄性不稔遺伝子…

    2025.10.01
  • 広島大ら,魚から発せられる光により鮮度を判定

    広島大学と宇和島プロジェクトは,生物が本来持っている蛍光(自家蛍光)を詳細に解析することにより,鮮魚の鮮度を非破壊的かつ定量的に評価できる可能性を調査し,少なくとも,トラウトサーモン,マダイ,ブリの3魚種に共通する蛍光成…

    2025.08.18
  • 科学大,粘度測定を実現する蛍光色素の設計指針確立

    東京科学大学の研究グループは,凝集誘起発光色素(AIE色素)の粘度応答性発光を実験と理論の両面から系統的に調査し,従来の分子ローターと呼ばれる蛍光粘度センサーよりも高感度な分子の設計指針を確立した(ニュースリリース)。 …

    2025.08.08
  • MKS,蛍光イメージング向けフィルターセットを発売

    米MKS Inc.は,蛍光イメージング向けに設計した「Newport ODiate 蛍光フィルターセット」を発表した(ニュースリリース)。 DAPI,TRITC,GFP,FITC,Texas Red,Cyanine (C…

    2025.06.26
  • 芝浦工大ら,可視から赤外域に切替わる蛍光色素開発

    芝浦工業大学,早稲田大学,物質・材料研究機構は,可逆的な酸化還元反応によって可視(VIS)から近赤外(NIR)・短波赤外(SWIR)領域へと蛍光をスイッチできる有機色素材料の開発に成功した(ニュースリリース)。 有機蛍光…

    2025.05.21

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア