産総研ら,超高速・高感度ウイルス検出法を開発

産業技術総合研究所(産総研)と埼玉大学は,測定時間1分でインフルエンザウイルスを検出できる超高速ウイルス検出法と,PCR法を超える検出下限100コピー/mLの感度を実現した超高感度ウイルス検出法をそれぞれ開発した(ニュースリリース)。

新型コロナウイルスのスクリーニング検査に広く用いられているイムノクロマトグラフィー法(迅速抗原検査キットで使用)や確定検査のためのPCR法では,“その場検査”に求められる迅速な測定と高い検出感度の両立が課題となっている。

産総研が開発したデジタル検出法は,マイクロメートルサイズの微小穴(ウェル)の配列(アレイ)を用いたもの。ウェル1個あたりの体積は0.5pL(ピコリットル)で,ここにウイルスと検出試薬を閉じ込めることで高いコントラストで光信号を検出する。

また,埼玉大学が開発したAIE試薬は,10秒以内にウイルスと反応して素早く蛍光信号を発生する。デジタル検出法に取り入れることで,超高速ウイルス検出の実現を目指した。インフルエンザウイルスの検出試験では,アレイ中のウェルが発光した。

ウイルス濃度に対する発光ウェルの数から評価した検出下限のウイルス濃度は3×105コピー/mLであり,従来の迅速抗原検査キットの検出下限(106~107コピー/mL,測定時間は15~30分)を超える。測定時間も,検体の前処理や発光観察の時間を合わせて1分以内と,従来の10分の1以下で実施できる。

産総研は同じウェルアレイを用いて,PCR法を超える超高感度ウイルス検出法も開発した。高感度化のため,目的のウイルスだけに結合する微粒子に,磁場による制御が可能な磁気微粒子を用いた。

従来のデジタル検出法では一つのウェルに1個の磁気微粒子を格納するが,産総研は一つのウェルに多数の磁気微粒子を格納する“多粒子格納デジタル検出法”を提案。高濃度の磁気微粒子を用いることで素早く多数のウイルスを捕捉できる。理論計算と捕捉実験により,短時間(数分以内)でウイルス捕捉するためには,従来法より2桁以上高い濃度(1億個/mL以上)の磁気微粒子を用いるのが重要だと明らかになった。

蛍光基質MUNANAを用いてインフルエンザウイルスの検出試験を行なった結果,MUNANAとウイルスとの反応により発光するウェルが観察された。検出下限のウイルス濃度は100コピー/mLで,PCR法(検出下限はおよそ1000コピー/mL)を超える感度を達成した。測定時間は現在約30分を要するが,最適化により2分の1から5分の1程度まで短縮できる見込みだという。

研究グループは今後,新型コロナウイルスやノロウイルスなどを検出する実証を進め,検査装置の実現を目指すとしている。

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