金沢大ら,コーラス電磁波の周波数特性に知見

金沢大学,名古屋大学,国立極地研究所,電気通信大学は,オーロラ現象の地上観測から,宇宙で発生するコーラス電磁波の発生域における周波数特性を明らかにした(ニュースリリース)。

半世紀以上にわたり世界中の科学衛星は,地球周辺の宇宙でプラズマを加速させる自然電磁波のコーラス電磁波を調べている。コーラス電磁波は,地球周辺のプラズマを放射線になるまで加速させるだけでなく,地球磁力線に沿ってプラズマを地上へ降下させフラッシュオーロラなどの特殊なオーロラ現象を発生させる。

コーラス電磁波は,電子ジャイロ周波数の半分を基準に,高周波コーラスと低周波コーラスに分かれて観測されている。コーラス電磁波の周波数により,コーラス電磁波が影響を与える電子エネルギーは異なる。このため,宇宙の発生域におけるコーラス電磁波の周波数分布を明らかにすることは,地球周辺プラズマ環境の理解に重要となる。

しかし,コーラス電磁波は発生域から離れて伝搬するため,科学衛星による電磁波観測だけでは発生域と発生域から離れた位置のコーラス電磁波の周波数分布を区別することが困難だった。

研究グループは,コーラス電磁波に伴い発生するオーロラ現象であるフラッシュオーロラの時間特性から,宇宙のコーラス電磁波の周波数分布を調べた。低いエネルギーのオーロラを光らせる電子は地上に遅く到達,高いエネルギーの電子は地上に速く到達し,電子エネルギーはコーラス電磁波の周波数と関係するため,オーロラの時間特性から宇宙のコーラス電磁波を調べられると考えた。

オーロラ観測とコンピュータによる数値計算により,宇宙の発生域において低周波から高周波までコーラス電磁波の周波数分布が連続であると,観測されたフラッシュオーロラの時間特性を再現することができた。

つまり,衛星位置が発生域かどうかを特定することが難しかったため,衛星位置において低周波コーラスと高周波コーラスは,それぞれ分かれて観測されることがあったが,コーラス電磁波の発生から伝搬までの全ての物理過程を含んだフラッシュオーロラを解析したからこそ,遠くの宇宙で発生するコーラス電磁波の周波数特性を詳細に明らかにすることができたという。

コーラス電磁波は,地球だけでなく磁石になっている他の惑星でも観測されている。しかし,磁石になっている水星においてコーラス電磁波はまだ調べられていない。研究グループは,現在,水星に向けて航行中の水星磁気圏探査機との電磁波観測と地球での知見を比較することにより,水星におけるコーラス電磁波の電子への影響が明らかになることが期待されるとしている。

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