極地研ら,オーロラ観測にCTを応用し3D構造を復元

極地研究所,東北大学,電気通信大学は,北欧の3地点で観測されたオーロラ画像に,医療診断の分野で多く用いられているコンピュータトモグラフィ(CT)の手法を適用し,脈動オーロラの3次元構造を復元することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

オーロラは,宇宙空間から地球大気中に降り込んできた電子(降下電子)が地球大気中の窒素や酸素などの粒子と衝突することで発光する。最近の研究では,準周期的に脈を打つように点滅する脈動オーロラが発生しているとき,同時に成層圏のオゾン破壊に関与するような高エネルギー電子が地球大気中に降下していることが示唆されている。

これまで降下電子は,オーロラ発光領域内や発光領域上空を飛翔するロケットや衛星などで直接観測してきた。しかし,これらの飛翔体は高速で移動しながら観測を行なうため,観測されたデータの変動が,時間変化によるものか,空間変化によるものかを区別できなかった。また,飛翔体での観測はその軌道上に限られるため,3次元的に広がる脈動オーロラ発光の構造や降下電子の空間分布も明らかにされていなかった。

研究では,脈動オーロラの3次元構造とオーロラ発光を引き起こす降下電子の2次元分布の時空間変動を明らかにするために,医療診断の分野でよく用いられるコンピュータトモグラフィ(CT)解析手法を応用した。CTは複数の方向から撮影された2次元画像から元の3次元構造を復元する。

研究グループは,北欧の3地点に設置されたオーロラ観測用の高感度カメラによって同時に観測された脈動オーロラの連続画像に対してCT解析を行ない,脈動オーロラの3次元構造が時々刻々と変化する様子の可視化に世界で初めて成功した。

復元された3次元構造は,大型大気レーダーによる電離圏の電子密度の観測結果を精度良く再現でききた。さらに,CT解析にオーロラ発光モデルを組み込むことで,脈動オーロラ発光を引き起こす降下電子のエネルギーの2次元分布の復元にも世界で初めて成功した。

復元したデータから,斑点状の脈動オーロラ中で,降下電子のエネルギーが高い領域が時間によって変化していることが明らかとなった。降下電子のエネルギーは宇宙空間の磁場やプラズマの環境に依存する。

この研究により,降下電子のエネルギーという遠く離れた宇宙空間の物理量を,地上に設置されたカメラから遠隔で観測することが可能となった。研究グループは,このCT解析手法を様々なオーロラに適用し,それぞれのオーロラの3次元構造や降下電子分布の統計的な解明を進めていくとしている。

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