早大,動的条件下でのX線CT撮影技術を開発

早稲田大学の研究グループは,ストロボ効果を利用した動的条件下でのX線CT撮影技術(動的X線CT)を開発,動的X線CTと動的粘弾性試験を同時に実施する実験系を構築し,ゴム材料のミクロな内部構造とマクロな特性である減衰特性の関係を分析した(ニュースリリース)。

近年,材料内部の構造を非破壊検査する方法としてX線CTが普及し,マイクロ・ナノオーダーの分解能での計測が可能となってきた。一方で,X線CTは対象物を回転させながら計測するため,動的条件下での観察には向いていない。

材料の減衰特性評価では引張状態で振動を加え,そのときに発生する荷重と変位を計測する動的粘弾性試験がよく利用される。この動的粘弾性試験の動的条件下においてX線CT撮影による計測を同時に実施することができれば,複合化したゴム材料の内部構造および動的挙動と減衰特性の関係性が明確になると考えた。

そこで研究グループは,動的粘弾性試験では材料が繰り返し変形することに着目し,加振周期,CT回転ステージの回転速度,CT画像用のカメラのシャッタータイミングを制御することでストロボ効果を利用した撮影手法を開発した。

そして,大型放射光施設SPring-8に,今回開発した新たな小型動的粘弾性試験を導入し,動的粘弾性試験と動的X線CTによる同時計測を実現した。今回の成果を得るためには,SPring-8の極めて明るく安定した光源と高速度カメラを利用したCTが必須だった。

この撮影技法が有効であるか確かめるため,制振材としてよく利用されるスチレンブタジエンゴム(SBR)に,球状,板状の形状をもつ酸化亜鉛(ZnO)を複合化した試験片を用意し,動的X線CTを実施した。

ZnOは安価かつ形状の種類が多く,複合材としてよく利用される。静的および動的条件下のCT画像を比較した結果,動的条件下の内部構造を可視化できたことからこの研究で開発した動的X線CTが有効であることを確認した。

また,内部構造と減衰特性の関係を分析するため,CT画像からμmオーダーの空間でひずみを算出した結果,複合化する微粒子形状の違いによって材料内部のひずみが均一ではなく不均一になることがわかった。

SBR単体および球状の場合は,ヒストグラムは鋭いピークをもっており,均一な変形が起こっていることを示す。一方,板状では広域的な分布となっておりひずみの大きさにばらつきがあり,不均一な変形が起こっている。このように,ミクロな動的挙動の特徴を捉えることが可能となった。

研究グループは,テラヘルツ波を用いたCT撮影や,材料に限らず医療・バイオ関連分野への応用も期待できる技術だとしている。

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