電通大ら,最強可搬型磁場発生器とX線で結晶観察

電気通信大学と東京大学は,完成させたポータブル超強磁場発生機PINK-01をX線自由電子レーザー施設SACLAに持ちこみ,理化学研究所,高輝度光科学研究センターと共同で,世界最高超強磁場77テスラ中で物質の結晶構造変化のミクロ観察に成功した(ニュースリリース)。

非常に強い磁場中では,物質の新規な電子・磁気・結晶状態が生まれると考えられている。従来,100テスラ級の非常に強い磁場を発生するためには大型の施設が必要であり,世界の限られた施設でしか利用することができなかった。

先進的量子ビームを利用すれば,超強磁場中での物質のミクロな電子・磁気・結晶状態観測をすることができるが,これらの施設も同様に大型であり,また,強磁場施設と併設されていないために,超強磁場中でのミクロ観察は従来困難だった。

今回,研究グループでは,小型パルス超強磁場発生装置「PINK-01」を完成した。この装置は全体重量として1トンを下回るため,ポータビリティを備えつつ,100テスラに迫る77テスラ超強磁場を発生することができるとする。

これは従来のポータブル磁場発生装置の最高磁場である40テスラを大きく上回る磁場値であり,現状で世界最強のポータブル磁場発生装置となる。この装置は従来の一巻きコイル法装置に比べて、コンデンサエネルギーを100分の1程度に縮小し,一巻きコイルの直径を10分の1程度に縮小することでポータビリティを実現した。

研究グループはPINK-01をX線自由電子レーザー施設SACLAに搬入し,X線レーザービームを利用したX線実験を行ない,77テスラ超強磁場を発生した瞬間の物質のX線回折実験に成功した。

実際に磁場がかかる前とかかっている最中で,大きく結晶状態が変化していることを見いだした。これにより世界に先駆けて,77テスラ超強磁場での物質の結晶構造変化をミクロ観察することに成功した。

100テスラ級の超強磁場は持続時間100万分の1秒程度であり,その短い時間内でデータを取得する必要がある。SACLAのX線レーザーは,それよりもずっと短い100兆分の1秒でX線回折実験ができることから,今回の実験はPINK-01とSACLAを組み合わせることによって初めて可能となった。

この成果により100テスラに迫る超強磁場を持ち運ぶことが可能になった。また,今回の実験で,物質科学の基本手法であるX線回折実験が超強磁場条件下で可能であることが示された。

100テスラで磁場による結晶状態変化が予想されている物質は多く,研究グループは今後,これらが一気に解明されることが期待されるとしている。

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