東大ら,大気蛍光望遠鏡で原子核の到来方向を推定

著者: 梅村 舞香

東京大学,大阪公立大学,大阪電気通信大学,神奈川大学,信州大学,理化学研究所は,宇宙の物質構造をなす銀河から最高エネルギー宇宙線が発生すると仮定して,電荷をもった重い原子核が宇宙磁場によって曲げられて地球に到来したことを初めて明らかにした(ニュースリリース)。

宇宙から降り注いでいる高エネルギーの粒子(宇宙線)の中には,非常に高いエネルギーの宇宙線がごく稀に存在しており,宇宙におけるもっとも激烈な物理現象と関連していると考えられている。

宇宙線は荷電粒子であるため宇宙磁場で曲げられるが,非常に高いエネルギーの宇宙線は磁場で曲げられにくく,その到来方向が発生源を指し示すことが期待される。

今回研究グループは,米ユタ州に建設したTA宇宙線観測装置の地表粒子検出器で2008年から14年間で取得したデータを用いて,100EeVを超える最高エネルギー宇宙線を19事象観測した。

TA宇宙線観測装置は海抜約1400mにあり,北半球で最大の宇宙線検出器となっている。3m2サイズのプラスチックシンチレータ地表検出器507台を1.2km間隔に設置して約700平方km2の面積で宇宙線を検出し,それを見込むように三か所に大気蛍光望遠鏡ステーションを建設した。

宇宙から超高エネルギー宇宙線が大気中に飛来した際に発生した広域空気シャワーの横方向発達を地表粒子検出器で検出し,縦方向発達を大気蛍光望遠鏡で検出し,宇宙線のエネルギー,質量組成,到来方向を測定する。観測の結果,19事象の到来方向は等方的に分布していた。

これは最高エネルギー宇宙線が電荷をもった重い原子核で宇宙磁場によって曲げられて地球に到来したことを示唆する結果だという。

研究グループは今後は,最高エネルギー宇宙線の観測例をさらに増やすとともに,粒子を識別する方法を向上させ,宇宙の極高エネルギー現象との関連を明らかにしていくとしている。

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