名工大,光学活性ジオキサンを単純な原料から合成

名古屋工業大学とリガクの研究グループは,ジフルオロケトン類から,医薬品候補化合物として魅力的な光学活性1,3-ジオキサンを,立体選択的に一挙に構築する新たな化学合成手法を開発した(ニュースリリース)。

フッ素原子は,至るところで私たちの生活を支えている。中でも有機フッ素化合物は医薬品の材料として多用されており,医薬品全体の約20%フッ素系医薬品となっている。

これはフッ素は医薬品化合物の化学構造に導入すると,生理活性に関わる性能を劇的に向上させることが多々あるためで,抗HIV薬のエファビレンツやコロナウイルス治療薬デキサメタゾン,抗マラリア薬のメフロキンなどが代表例として挙げられる。

しかしながら,有機フッ素化合物の化学合成は,フッ素が誘引する特異な性質のため一筋縄ではいかないことが多く,簡便で信頼性の高いフッ素化合物の合成法の開発が望まれている。とりわけ,医薬品開発には不可欠である光学活性フッ素化合物の合成手法の開発は難易度が高く,挑戦的な課題でだという。

フッ素官能基の中でもジフルオロメチル基(-CF2-)はカルボニル基やスルホニル基,エーテル結合の生物学的等価体として作用するため,創薬研究において有用なツールとして利用されている。これまで,ジフルオロメチル基を有する化合物の合成法はいくつか報告されているが,不斉炭素,特に環状骨格上の四置換不斉炭素にジフルオロメチル基を有する化合物の合成は残された課題だった。

今回,研究グループは,独自に設計したパラジウム触媒を用いて,合成容易なジフルオロメチルケトンから合成困難なジフルオロメチル基が不斉炭素に導入された光学活性ジオキサン類を簡便に合成する手法を開発した。ジオキサン骨格は医薬品開発には重要な骨格の一つ。

この手法は,医薬品候補化合物として魅力的な光学活性ジオキサン骨格上にジフルオロメチル基を持つ化合物を一挙に構築することができ,新たなフッ素医薬品開発に向けた強力なツールとなることが期待されるとしている。

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