矢野経済研究所は,産業用ロボット向けセンサー世界市場を調査し,種類(内界,外界)別のセンサーや参入企業各社の動向,関連インターフェースであるエンドエフェクター市場,将来展望などを明らかにし,このうち協働ロボットを含む産業用ロボット向けセンサー世界市場規模予測を公表した(ニュースリリース)。
それによると,近年,産業用ロボット市場は大きく変動しており,注目度が高いという。産業用ロボットの世界市場は,「Industry4.0」を起点とする第4次産業革命,即ちスマート工場化や5G(第5世代移動体通信システム)スマートフォンや5Gデバイス用生産設備の導入,EVやADASの普及に備えた自動車産業の新たな自動化などの設備投資の影響で2010年代中頃から高成長期に入っている。
ところが,近年は米中貿易摩擦と新型コロナウイルス感染拡大という異常事態が発生し,その影響を受けている。一方,産業用ロボットメーカー各社が注力度を強めている協働ロボット(人間と協働作業が可能な産業ロボット)にも新たな動きが見られ,市場拡大が一段と加速される可能性が強まったとする。
協働ロボットは数年前から通常の産業用ロボットを上回る成長力を見せてきたが,コロナ禍で出荷台数が一時減少したものの,その後,逆にコロナ禍の影響で協働ロボットによる自動化ニーズがさらに強まるという状況がもたらされる結果となったという。
この調査では,ロボット本体の内側で使用される内界センサー,本体外部の周辺で使用される外界センサーなどを対象としているが,それぞれさまざまなセンサーが使われている。産業用ロボットへのセンサー搭載数はロボットの種類で違うが,通常はロボット1台当たり20~25個程度使われることが多い。
調査では,2020年の産業用ロボット向けセンサー世界市場を,メーカー出荷金額ベースで880億円と推計した。内訳を種類別にみると,内界センサー市場が全体の約53.4%を占め,外界センサー市場は約46.6%とする。
産業用ロボット向けセンサー世界市場は基本的には産業用ロボットの出荷数と連動することになる。協働ロボットを含む産業用ロボット世界市場は米中貿易摩擦やコロナ禍などの不測の事態の影響を強く受けているが,足元では巨大な中国市場に不透明要素が残るものの回復基調に戻ると予測している。
産業用ロボット世界市場は今後再拡大する方向にあるため,産業用ロボット向けセンサー世界市場も連動して拡大する見通しだが,それに加えて1台当たりセンサー搭載数が通常の産業用ロボットより30~40%以上多い協働ロボットがさらに伸長するため,産業用ロボット向けセンサー世界市場の牽引役になることが確実な情勢だという。
そうしたことから,この市場は2020年から2025年までの年平均成長率(CAGR)が11.6%となり,2025年には1,520億円に達すると予測している。