東北大ら,ファンデルワールス力で異種界面接合

東北大学,高エネルギー加速器研究機構(KEK),東北大学,神戸大学,東京工業大学,早稲田大学,パリ=サクレー大学,仏国立研究センターは,六方晶系の二次元物質(グラフェン)と正方晶系の規則合金(L10-FePd)の結晶系の異なる界面(異種結晶界面)を”しなやか”に結合させ,かつ”つよい”混成軌道を誘起させることに成功した(ニュースリリース)。

情報機器でのエネルギー問題を解決するために,計算機に用いられている揮発性メモリを不揮発性磁気メモリ(MRAM)に代替していくことが重要となる。

MRAMの界面磁気異方性を増大させ,Xnm世代に向けた新たな材料の選択肢として高結晶磁気異方性を有するL10規則合金が注目されている。しかし,L10規則合金とMgOトンネル障壁は結晶格子の大きさは約10%も異なるため,高品質な強磁性トンネル接合(MTJ)素子を作製できない。

そこで研究グループは二次元物質の間に生じるファンデルワールス力に着目した。二次元物質はファンデルワールス力により金属と緩やかに結合するため,強い化学結合による格子不整合の影響を回避して,平滑な界面を形成する可能性が期待できる。

また,二次元物質であるグラフェンなどの特徴はXnm世代のMTJ素子に求められる要求の多くを満たす。そこで研究グループはグラフェンをトンネル障壁材料とし,L10-FePd規則合金を記録層とする新しいMTJ素子の研究に着手。量産化プロセスを念頭に製膜し,一貫した真空プロセスを選択した。

研究の結果,グラフェンとL10-FePdの異種結晶界面を,ファンデルワールス力により”しなやか”に結合させ,かつ界面電子密度の増加により”つよい”混成軌道を誘起させることに成功した。また,深さ分解X線磁気円二色性(XMCD)装置を用いて界面付近の磁気状態を調べ,界面垂直磁気異方性が出現していることを明らかにした。

さらに,直接観察実験と理論計算の両方からグラフェン/L10-FePd の異種結晶界面の原子位置を正確に決定することに成功した。この研究により,界面磁気異方性とL10-FePdのもつ高い結晶磁気異方性の両方を利用する道筋が示され,Xnm世代のMRAM用の微小なMTJ素子への利用が期待されるとしている。

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