市大ら,蛍光性ポリマーの色をレーザー強度で変換

大阪市立大学,神奈川大学,豪スウィンバーン工科大学,豪ロイヤルメルボルン工科大学は,蛍光性ポリマーの蛍光の色をレーザー光の強度だけで青,緑,黄緑,黄色,オレンジ色に完全リモートかつ可逆的に自在にコントロールできる方法を開発した(ニュースリリース)。

通常,発光の色は発光体に固有の量子化された電子のエネルギー準位で決まってしまうため,いったん発光体の化学構造が固定されてしまうと,その発光の色を変化させるのは困難だった。

研究グループは,ナノ・マイクロメートルサイズの物質・物体をレーザービームで捕捉し,操ることのできる「光ピンセット」の研究を展開してきた。今回,ペリレンと呼ばれる蛍光性色素で化学修飾したポリマーを,水中で光ピンセットを用いて捕捉した。

この時,特殊なナノ構造を表面に有するシリコン結晶(ブラックシリコン)を試料溶液中に沈めておくと,シリコンナノ構造の光電場増強効果により,ペリレン修飾ポリマーが捕捉され,局所的な濃度が上昇し,ポリマーの集合体を形成することを発見した。

ペリレンは濃度が高くなるとエキシマ―と呼ばれる二量体の励起錯体を形成する。この励起錯体は蛍光を発するが,濃度によってその蛍光色は可視域において変化する。研究グループは,この点に着目。捕捉用のレーザーの光強度を強くすると,光の圧力も強くなり,ブラックシリコン上に捕捉される集合体のポリマー濃度が濃くなる。逆に,レーザー光強度を弱くすると,その濃度は薄くなる。

これに応じて,ポリマー集合体が放つ蛍光の色は変化することがわかった。つまり,この「ブラックシリコン光ピンセット」の技術を水溶液中のペリレン修飾ポリマーに適用すれば,ブラックシリコン上にポリマー集合体を形成でき,その蛍光の色を「試料に全く手を触れずに」,レーザー光強度の変化だけで,青,緑,黄緑,黄色,オレンジ色とフルカラーRGBに近いバリエーションで可逆的にリモート制御することに成功した。

濃度に依存して発光の色が変化する機構は,励起錯体,励起エネルギー移動に応用ができるため,この技術は可視域だけでなく,紫外域や近赤外域における発光色の制御にも適用できるという。

マイクロカプセルの中にナノ構造シリコンとペリレン修飾ポリマー水溶液を封入すれば,波長可変型のマイクロ光源となり得るため,マイクロマシンの部品や細胞内バイオイメージングへの応用などが考えられる。研究グループは現在,このような方向でさらなる発展を見込んだ研究を進めているとしている。

その他関連ニュース

  • 東大,大きく不規則な粒子の光ピンセット操作に成功 2024年05月15日
  • 阪大ら,長波長側の光で陰イオンを検出する材料開発 2024年04月16日
  • 富山大,有機硫黄酸化物を捕まえると光る分子を開発 2024年04月09日
  • 北大ら,短波赤外蛍光イメージングの医療用色素開発 2024年04月08日
  • 京大ら,Ca2+とcAMPを感知する蛍光タンパク質開発 2024年03月25日
  • 東工大ら,高光安定性かつ低毒性の蛍光色素を開発 2024年03月13日
  • ExCELLSら,CDKを可視化するバイオセンサーを開発 2024年01月23日
  • 理研,タフな蛍光性自己修復材料の開発に成功 2024年01月23日