東京理科大学,英ケンブリッジ大学,京都工芸繊維大学は,金属イオンと有機配位子であるベンゼンヘキサチオール(BHT)を原料とした配位ナノシートに関して,NiとCuの2種類の異なる金属から成る「ヘテロ金属配位ナノシート(NixCu1-x/BHT)」の合成に成功した。さらに,このNiCu2BHTが,Ni3BHTやCu3BHTなどのホモ金属配位ナノシートよりも高い結晶化度,高い電気伝導性を示すことを実証した(ニュースリリース)。
配位ナノシートとは,金属錯体から構成される二次元物質。金属錯体は金属イオンと有機配位子から成り,様々な原料を組み合わせてつくることができるので,その組み合わせと完成した配位ナノシートの特性との相関性について注目されてきた。
今日までに様々な配位ナノシートが報告されているが,従来のホモ金属配位ナノシートでは結晶性が低く,優れた電気伝導性を得られないことが課題だった。
そこで研究グループは,新たに複数の異種金属を導入した混合系の配位ナノシートに焦点を当て,研究を進めてきた。様々な検討の結果,下層にBHTを含むジクロロメタン溶液,上層にNiとCuを含む水溶液を用いるボトムアップ型の合成法により,黒色のヘテロ金属配位ナノシートを得ることに成功した。
そして,合成したヘテロ金属配位ナノシートの結晶構造を種々の分析法により明らかにし,NiとCuの組成比が1 : 2であるNiCu2BHTが優先的に形成されること,ホモ金属配位ナノシートに比べて結晶性が大幅に向上していることを発見した。さらに,結晶性の向上に伴い,電気伝導性が最大で1300S/cmまで向上したことを実証した。
さらに,ゼーベック係数の測定を行なったところ,すべてのヘテロ金属配位ナノシートにおいて,正のゼーベック係数が得られたため,主に正孔がキャリアとなるp型であることがわかった。過去の研究から,Cu3BHTは電子がキャリアとなるn型であることが報告されているので,金属の構成比によりp型とn型の転換点があることが示唆された。
研究グループは,この研究で開発されたヘテロ金属配位ナノシートは,優れた機能性を有する電子材料や電池材料開発への貢献が期待でき,エレクトロニクス分野での幅広い応用の可能性が示唆されたとしている。