東北大,シリコン結晶の表面構造を詳細に決定

東北大学の研究グループは,結晶の複雑な表面構造を詳細に迅速に決定することに成功した(ニュースリリース)。

市場に出回っている大規模集積回路は,既に5nmプロセスで作成されており,さらに小さなスケールの実現を目指して開発が進められている。

このように物質の微細化を進めていくと,材料に対する表面の割合がサイズに反比例して増えていく。表面の厚さを1nmと考えると,5nmでは既に20%が表面と考えることも可能であり,今後ナノ材料の機能に対する表面の影響は無視できなくなることが予想できる。

結晶は原子が規則的に配列したものだが,表面では原子列が突然途切れるために,原子配列に乱れが生じる。特に現在の半導体テクノロジーに欠かせないシリコン結晶は,その表面に複雑な乱れや結合の組み替えが起こることが知られており,表面構造の理解を進めることがさらなる縮小化の鍵となると考えられるという。

結晶の表面は,切断する向きによって異なった表面が現れるが,この研究では構造がほとんど知られていないシリコン(Si)の(110)表面を研究対象とした。超高真空に排気した電子回折実験装置内で清浄な Si(110)表面を用意し,ビスマス(Bi)を1原子層程度蒸着することで表面構造を整えて Si(110)3×2-Bi試料表面を準備した。

試料表面に1万電子ボルトの電子線を入射し,試料を回転しながら3千枚以上の回折パターンを測定し,大量のデータを基に構造解析を行なった。その結果,表面から5原子層を含む,厚さ1nmの領域のBiとSiの原子配列を三次元的に決定することに世界で初めて成功した。

この手法では原子の座標を,5pmという十分に高い精度で決定することができた。この手法の特長は,6時間で数千枚の回折パターンが測定できることと,高い精度を持った構造解析を数日で行なえることにあるという。

研究グループは,この研究で使用した迅速に複雑な表面構造を精密に決定できる独自の電子回折法を利用して,シリコン結晶の未知の表面構造や,他にも触媒や重要な機能材料表面の構造を決定し,機能の向上や新たな表面機能の創成に繋げていきたいとしている。

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