2026年ディスプレー関連市場,20年比20%増に

富士キメラ総研は,新型コロナウイルス感染症の流行に伴い,大きな動きがみられるディスプレーデバイスの世界市場について調査し,その結果を「2021 ディスプレイ関連市場の現状と将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。

それによると,2020年は上期に,新型コロナ流行に伴うエレクトロニクス機器の生産減少や消費活動の低迷により,ディスプレーデバイスの需要は大きく減少した。

しかし,下期にはテレワークの普及によるノートPC,PCモニター・AIOなどのIT機器や,ステイホームの長期化によるテレビ需要の増加に加え,車載ディスプレーの需要も回復に向かったことから,大型TFTの需給がひっ迫するほど活況となった。

2021年上期は,需要の継続により大型TFTの需給がさらにひっ迫したため,パネル価格が大幅に上昇。下期に入っても,旺盛な需要は続いているという。また,テレビセット需要は縮小に向かうものの,テレビ向けパネルは在庫の正常化に向けて,当面生産ラインの高い稼働率が継続するとみる。中小型ディスプレーは,5G通信端末への買い替えが進むスマートフォン向けのAMOLED,自動車生産が回復に向かっている車載ディスプレー向けのTFTなどが好調とする。

2021年は,価格上昇に伴い大幅に伸びる大型TFTは,価格が徐々に低下するとみており,2022年以降は市場縮小を予想しる。AMOLEDは,スマートフォンやOLEDテレビ向けの需要増加から,2022年以降も順調に市場は拡大するとみる。

大型TFTは,2020年は上期に大きく需要が落ち込んだが,下期はテレワークやステイホーム需要を取り込んだアプリケーション機器の好調により一転して需要が大幅に増加。2021年も引き続き需要は高止まりしているという。特に上期は,テレビ向けパネルを中心に需給がひっ迫する状況となった。

また,世界的な半導体不足によるドライバーICの価格高騰を受けて価格が大幅に上昇している。下期は,テレビ需要は落ち着くものの,パネルの在庫水準を通常レベルに引き上げるため,2021年末までは生産ラインの高稼働が続くとみる。

中小型TFTは,主力用途であるスマートフォン生産が減少したため2020年の市場は縮小。2021年は5G通信端末への買い替えによりスマートフォン市場は好調だが,AMOLEDの採用が増えているため,中小型TFTは苦戦しているという。

一方,車載ディスプレーや産業用・汎用ディスプレー向けの出荷は好調なため,市場は前年比11.8%増を見込む。2022年以降はヘッドマウントディスプレー(HMD)や車載ディスプレー向けは安定して伸びるが,スマートフォン向けは横ばいで推移するとみる。

大型AMOLEDは,新型コロナ流行により大手メーカーのOLEDテレビ生産が計画を下回ったものの,大型生産ラインの本格稼働や歩留まり改善により生産量が増加し,2020年の市場は前年比17.1%増となった。2021年は,上期からOLEDテレビの需要が増加し,店舗販売も拡大していることなどから,テレビ向けが大きく伸びるとみる。2021年以降QD-OLEDテレビが本格展開され,市場拡大が予想されるという。

中小型AMOLEDは,主力のスマートフォン向けでAMOLEDへの需要シフトが進んでおり,特にハイエンドスマートフォン向けの需要が着実に伸びているという。2020年は「iPhone」シリーズでの採用増加もあり,市場は堅調だった。2021年は「iPhone」シリーズでのさらなる採用増加が寄与するとし,順調な市場拡大を予想する。2022年以降は引き続きスマートフォン向けの伸びが期待されるほか,タブレット端末やノートPCなど中型アプリケーションでも採用が増えるとみている。

マイクロディスプレーは,Near Eye用としてデジタルカメラの電子ビューファインダー(EVF)やHMD,スマートグラスで使用されるマイクロOLED,LCOS,HTPSのディスプレーデバイスを対象とした。

2020年は,主力用途であるデジタルカメラの販売が落ち込んだため,マイクロディスプレーの市場は小幅ながら縮小。2021年は前年の反動もありミラーレス機などが好調なため,市場は拡大するとみる。2022年以降はカメラ向けの需要は減少するが,スマートグラスやHMDでの採用増加により,市場拡大を予想する。

スマートグラスは遠隔コミュニケーションニーズの高まりを背景に主にBtoB用途で,HMDは有力メーカーによる採用により,それぞれ大幅な伸びを期待する。特にマイクロOLEDの需要増加が市場をけん引するとみている。

2020年のLCD・OLED関連部品材料の世界市場は,OLED関連部材の需要は堅調だったものの,新型コロナ流行の影響による上期のディスプレーデバイス需要の落ち込みによりLCD関連や共通部材は縮小したという。2021年は各ディスプレーデバイスの需要増加により,各部材が伸びるとみる。2022年以降,LCD関連部材は横ばいで推移するが,OLED関連部材は順調な伸びを予想する。

LCD関連部材は,新型コロナ流行の影響により上期を中心に需要が減少し,2020年の市場は前年比微減となったという。2021年は大型TFTの出荷増加に伴い,液晶材料や偏光板,偏光板保護フィルム・位相差フィルム,QDシートなどが伸びるとみる。QDシートはQLEDテレビの生産増加や,PCモニターやノートPCでミニLEDバックライトの採用が増えるため,伸びが期待されるという。

OLED関連部材は,2020年はスマートフォンの生産が減少したものの,大型AMOLEDの堅調な需要を受け,市場は前年比4.3%増となった。2021年はテレビやスマートフォン向けのOLEDの伸びに伴い,前年より大幅な増加を予想する。中でも,円偏光板やOLED用封止材,OLED用バンク材・平坦化材料,蒸着型発光材料などの主要部材が大きく伸びるとみる。OLED用封止材では,特に膜封止材料であるフィル材の採用増を想定する。また,IJ-OLEDに使用される塗布型発光材料は2022年以降の伸びを期待している。

共通関連部材は,2021年は特に大型TFTの需要が増えており,前年比10%以上の伸びを期待する。特にガラス基板,表面処理フィルムが大きく伸びるとみている。

調査では,注目市場としてテレビセットを挙げた。同市場は2020年は,上期に新型コロナ流行の影響で低迷したが,下期はステイホーム需要や一部エリアでの経済補助金などが購買を後押したため需要は急速に回復し,市場は前年比微増となった。

2021年は上期に,ステイホーム需要の継続や東京五輪による需要喚起などで好調だった。しかし,下期は急激な需要増加の反動減もあり,主要市場である北米や中国を中心に販売が減少するとみており,前年比1.7%減を見込む。

LCDの占める割合が大きいが,2021年はOLEDが大きく伸びるのに対して,LCDは縮小するとみる。OLEDは,パネル製造の大型ラインの本格稼働によるパネル低価格化や,テレビセットメーカー各社がOLEDテレビをフラグシップとして注力していることから,2021年は前年比91.4%増を見込む。OLEDテレビの展開が遅れていた一部メーカーも,QD-OLEDの技術を生かすなどして,OLEDを強化する動きがみられるという。

マイクロLEDは,2021年に110インチ製品が発売されたが,パネル低価格化の見通しが立っていないため,当面の市場は小規模にとどまると予想している。

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