阪大ら,理想的な完全結晶表面の創製に成功

大阪大学,奈良先端科学技術大学院大学,中国大連交通大学は共同で,薄膜成長の土台となる単結晶基板(成長用基板)に原子の乱れを完全に除去した理想的な究極平坦表面(完全結晶表面)の作製に成功した(ニュースリリース)。

ナノエレクトロニクスデバイスの実現には,極薄膜の作製が重要となる。

薄膜の品質はその土台となる単結晶基板の影響を強く受ける。基板の表面処理には,①粒子の細かいサンドペーパーで擦るようにして凹凸を取り除く処理(機械研磨)と,②表面を溶かす,または柔らかくすることで凹凸の除去を促進する処理(化学エッチング)がある。

①と②を並行して行なう化学機械研磨が一般的だが,①の効果が大きいと原子の乱れ,欠陥が生じ,②の効果が大きいとでこぼこな表面になるため,完全結晶表面の作製は困難だった。そこで,研究グループは原子1つ1つを凸部から順に取り除き,最終的に平坦表面を得る表面処理法,触媒表面基準エッチング(Catalyst REferred Etching, CARE)法を開発した。

強相関酸化物であるマグネタイトは金属-絶縁体転移によりその電気伝導度が100倍以上変わることなどから,様々な手法でナノ構造化が進められてきた。しかし,これまではナノサイズ化(サイズ減少)により転移の消失や抵抗変化率の低下が報告されており,100nm以下の極薄膜では優れた転移特性の観察は難しいと考えられていた。

その理由として,マグネタイトで特徴的にみられるアンチフェイズバウンダリー(異相境界)などの欠陥がある。アンチフェイズバウンダリーは主に成長用基板表面の原子の乱れ(粗さ,欠陥等)を原因に発生し,薄膜と成長用基板との界面に集中して存在する。つまり,極薄膜は欠陥を多く含むことになる。

研究グループではCARE法をマグネタイト薄膜の成長用基板に適用し,完全結晶表面を実現した。表面粗さは0.1nm rms未満であり,これは甲子園球場の広さの運動場の高低差が1mm以下に収まっているのと同じ平坦さだという。

これにより,薄膜/成長用基板界面の欠陥数が従来の約1/1000まで減少され,優れた導電特性(相転移特性)を示すマグネタイト極薄膜を実現した。この結果はこれまでは基板の表面の不完全性から機能が劣化していた材料でも,極薄膜で材料本来の優れた物性を実現できることを示しており,極薄膜の機能発現のための有効なアプローチとなる。

研究グループは,完全結晶表面上の極薄膜で発現される優れた物性を利用することで,ナノエレクトロニクス応用はもちろん,ナノ物性物理を発展させる学理構築に大きく貢献するとしている。

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