佐賀大学と香港城市大学は,マルチバンドギャップ半導体を用いた中間バンド型太陽電池において,効率向上の鍵である二段階光吸収電流の増加に成功した(ニュースリリース)。
中間バンド型太陽電池は,従来の半導体のバンドギャップ内に新たなバンドを有する材料を用いる太陽電池。
この中間バンドを介した光吸収が太陽光の幅広いスペクトルを吸収できることから,理論値で63.8%の高いエネルギー変換効率が期待されている。
この中間バンドを実現する方法として,量子ドット超格子を用いる手法が広く研究されているが,研究グループでは材料本来の性質として中間バンドを有するユニークな材料であるマルチバンドギャップ半導体を用いた研究を進めてきており,2012年にこの材料を用いた中間バンド型太陽電池の発電原理を世界で初めて実証している。
効率向上のためには中間バンドを介した二段階光吸収の増加が重要な課題だったが,従来の材料では熱平衡下で中間バンド内に電子がほとんど存在しないため,光吸収の割合が小さく改善が必要となっていた。
研究では,ドナーとして作用する不純物を添加した結晶成長を行なうことにより中間バンド内の電子濃度を増加させた結果,二段階光吸収電流の増加に成功した。
研究グループは,この研究成果について,この材料を用いた中間バンド型太陽電池の効率向上のための重要な要素技術であり,脱炭素社会実現に向けた次世代太陽電池の開発に貢献できるとしている。