横浜国立大学,東京工業大学,芝浦工業大学は,光相関制御型の新方式ライダーを開発し,100kHzの高速振動を検出することに成功した(ニュースリリース)。
一般に,振動検出技術として光測定が使われるが,その中でもドップラーシフトを利用することで測定を行なうレーザードップラー振動計が主流となっている。
しかし,この手法では測距が想定されていないため,測定レンジが短い,高速な測定位置の切り替えが難しい,などの問題点を抱えていた。そこで,長距離の測距と振動検出能力を備えたセンサーの実現が望まれている。
そこで研究グループは,光干渉の性質(光の相関)を巧みに制御することで,長距離の測距と振動検出を同時に行なうことのできる「相関領域ライダー」を開発し,その性能実証として,100kHzの超高速振動測定に成功した。
ライダーで測定を行なうには,測定対象にレーザー光を照射してその反射光を分析する必要がある。相関領域ライダーでは,その反射光を参照光と干渉させる。このとき,レーザー光に周波数変調を施すことで,反射光と参照光が強く干渉する点「相関ピーク」が形成される。
相関ピークは測定点として機能し,相関ピークと重なった点からは詳細な情報を取得することができる。例えば,相関ピークと重なった測定対象が振動している場合は,その周波数や振動波形を測定することができるという。
相関ピークの位置は,レーザー光の変調パラメータによって自在に制御することができる。よって,複数の測定対象が広範囲に分布している場合でも,相関ピーク位置を掃引することで測定をすることが可能。
相関領域ライダーによる測距を実証するため,レーザー光の空間出射口からの同一直線上の12cm,25cm,41cmの地点にビームスプリッタおよびミラーを設置し,0cmから48cmの区間で反射率の分布を測定したところ,正しい位置での反射が強くなっており,測距能力が示されたという。
相関領域ライダーでの振動検出が可能であることを実証するために,30kHzで振動する振動発生装置の波形と周波数を測定した。反射光パワーの時間変化から波形を測定し,その波形に対して周波数解析を行ない,振動周波数の特定を行なったところ,正しい周波数(30kHz)にピークが現れ,振動検出能力も示された。原理的にはさらに高い周波数も測定できるとする。
相関領域ライダーの応用展開として,流速分布測定を想定する。空気中に存在する粒子の振動や動きをとらえることにより,空気の流れを可視化する。また,生体信号の非接触センシングへの応用も期待できるとしている。