産総研ら,複雑な材料の物性を予測するAIを開発

産業技術総合研究所(産総研),先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT),日本ゼオンは,人工知能(AI)によって材料の構造画像を生成し,物性予測を可能とする技術を開発した(ニュースリリース)。

マテリアルズ・インフォマティクスやプロセス・インフォマティクスは,従来の人の勘や経験に基づく材料開発を飛躍的に高度化させる新しい切り口として期待されている。

一方,コンピューター上で取り扱える対象は,比較的単純な化学構造を有する低分子化合物,周期構造を有する金属や無機化合物などに限定されており,CNTに代表される複雑な構造の材料にも適用できるAI技術が求められていた。

今回開発した手法は,画像データの特徴を学習し,疑似的な画像(AI画像)として生成する条件付き敵対的生成ネットワーク(C-GAN) を用いる。CNT膜はいくつかの階層構造をもち,この構造をコンピューターで取り扱えるようにするため,低倍(2,000倍)から高倍(100,000倍)まで4つの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を組み合わせ,C-GANに学習させた。

この画像のタイリング手法により,CNTのもつ複雑な構造を精度よく学習し,忠実なAI画像として生成することが可能となった。

つぎに,種類の異なるCNTを任意の割合で混合したCNT膜について,物性予測を検証した。学習には,製法別7種類のCNT膜に加えて,そのうち2種類を混合させたCNT膜を作製し(計17種類),それらのSEM画像および物性値を学習データとして用いた。

それにより,2~3種類のCNTの選択(材料選定)から,配合比率を任意に変えて混合させたCNT構造の画像生成(加工),物性値の予測(評価)まで,一連の実験作業がコンピューター上で可能となったという。

得られた予測結果を実験値と比較したところ,AI構築に利用したデータについて,その信頼性(決定係数:R2)は,電気伝導率・比表面積ともに0.99だった。また,AI構築に利用していないデータを用いてAIの予測性は,決定係数は電気伝導率で0.85,比表面積で0.42だった。学習に使わなかったデータに対する成績の向上,他の材料への適用がこれからの課題だという。

この技術によって,CNT膜の物性をもたせつつ,最小の材料コストで作製するための最適な組成が得られることがわかった。また,従来は網羅的な実験データと長期間の解析を要していた経済性の分析も,この技術が有効であることが示された。

この技術は,マテリアルズ・インフォマティクスの適用範囲を格段に広げ,複雑な構造をもつさまざまな材料に利活用できるAI技術として材料開発を加速化するとしている。

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