神大ら,光反応のエネルギー効率を大幅に向上

神戸大学と金沢大学は,光磁場を増強するナノ構造を形成し,分子のスピン反転を伴う光学遷移を大幅に促進する技術を開発した(ニュースリリース)。

光反応は分子の光励起状態を用いて,暗状態(励起光なし)では進行しない分解,合成,異性化等の反応を実現する技術であり,太陽光を利用したクリーンな化学製造プロセスとして注目されている。

高効率な光反応を実現するためには,物質の光励起状態をコントロールする技術が不可欠。一般的に,分子に光を照射すると,電気双極子遷移により電子が基底一重項(S0)から励起一重項(S1)へ遷移(S0→S1)する。

一方,S0から励起三重項(T1)への遷移(S0→T1)は電子スピンの反転を伴うため禁制遷移となり,光で直接励起できない。そのため,T1はS1からの項間交差による“間接的な”過程によって生成され,直接励起に比べてエネルギー損失が生じる課題があった。

そこで研究は磁気双極子遷移に着目。磁気双極子遷移では電気双極子遷移において禁制であったスピンが反転する遷移が許容されているが,光の周波数領域における磁場の効果は非常に小さく,通常,磁気双極子遷移は無視されている。一方,もし光の周波数領域において磁場増強を実現できれば,磁気双極子遷移によりT1を高効率に直接励起することが可能となるという。

誘電体や金属のナノ構造に電磁波(光)を照射すると,光学的な共鳴により,光の電場・磁場を局所的に増大することができる。研究では誘電体メタ表面上で著しく増強された磁場により,これまで無視されていた磁気双極子遷移によるS0→T1直接遷移の増大を実現した。

開発した高屈折率誘電体であるシリコンナノディスクの配列構造(シリコンメタ表面)による実験の結果,メタ表面の共鳴波長を800nmに調整した場合,平坦なガラス基板に比べて最大37倍大きいりん光強度を観測した。これは,T1状態を励起するために必要な光子エネルギーを間接的な過程と比べ400meV以上削減できることを示しているという。

また,電磁場シミュレーションにより,観測されたりん光強度の増強は,メタ表面上の増強磁場によるスピン反転励起の増大に起因することを定量的に示した。

今回開発したメタ表面の共鳴波長は広い範囲で制御可能であり,あらゆる分子のスピン反転励起を増強することができるとする。これにより,従来の光化学反応のエネルギー効率の大幅な向上や新しい化学反応経路の開拓が期待されるとしている。

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