工学院ら,同位体マイクロイメージング装置を開発

工学院大学,名古屋大学,東京電力ホールディングス,日本原子力研究開発機構(原研)の研究グループは,課題「世界初の同位体分析装置による少量燃料デブリの性状把握分析手法の確立」が,日本原子力研究開発機構の委託研究事業「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業」の課題解決型廃炉研究プログラムに採択されたと発表した(ニュースリリース)。

核燃料や燃料デブリには様々な同位体が含まれている。通常運転時の原子炉内の様々な放射性同位体の存在比は知られているが,福島第一原発(1F)の事故により形成された燃料デブリは核燃料や原子炉構造体などが複雑に混合した物体であり,放射性同位体や存在比を分析する手段がない。

工学院大学は,放射性同位元素を含め,種々の元素を同位体ごとに微小視野でイメージングし,世界で初めて高精度に同位体を識別するイメージング技術を,JST先端計測分析技術・機器開発プログラム(2016~2019年度)において開発した。

現在までのところ,この種の分析はバルク分析が行なわれているが,バルク分析では元素や同位体の不均一性が解明できない。そこで,二次イオン質量分析法とレーザー共鳴イオン化法を組み合わせた同位体マイクロイメージング装置を原研大洗研究所に設置した。これは,同重体干渉なく放射性同位元素をイメージングできる唯一の装置。

この装置はSEM機能・FIB機能を有し,放射性の微小試料に微細加工を行ないながら同位体分析・成分(多元素同時)分析が可能。少量燃料デブリ試料からアクチニド核種の同位体組成などの局所的な定量データが多量に得られるため,詳細な燃料デブリの性状を正しくかつ迅速に把握することが可能だとする。

研究ではウランを含む天然の鉱石を試料として用い,主要同位体である238-Uから,0.0054%しか含まれない234-Uまで微小視野で同位体別イメージングに成功した。この技術を燃料デブリ分析に応用することで,様々な放射性核種の同位体比分布が可視化され,デブリの性状やデブリ取り出しの安全性確保にとって大変重要なデータが得られる。

こうした分析情報はデブリ取り出し時の安全性の確保に必須であり,本格的デブリ取り出しに向けた重要な研究だという。研究グループは,廃炉工程の立案,実施に必要な性状把握を最大の目的として,1Fの廃炉工程に必須なマイクロエリアでの同位体イメージング手法を用い,燃料デブリや建屋内ダストの性状分析を行なうとしている。

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