関学ら,光合成を模した有機PVの動作機構を解明

著者: sugi

関西学院大学,中国吉林大学,長浜バイオ大学,立命館大学は,クロロフィル色素(Chl)誘導体を用いて天然光合成を模倣した有機太陽電池の動作機構の解明とヒドロキノン酸化還元媒体を利用した光電変換性能の向上に成功した(ニュースリリース)。

Chl誘導体を用いた有機太陽電池は,その高い光起電力性能から注目されている。Chl誘導体の原料となる葉緑素は天然に豊富に存在し,その生分解性を考慮すると,環境への負荷の少ない将来の応用が期待されている。

実際にChl誘導体(高等植物の光化学系Ⅰ複合体(PSI)のシミュレーターとしてChl-A(zinc methyl 3-devinyl-3-hydroxymethyl-pyropheophorbide-a),光化学系Ⅱ複合体(PSII)のシミュレーターとしてChl-D(methyl131-deoxo-131-dicyanomethylene-pyropheophorbide-a)を利用し,天然光合成のZ-スキームを模倣して構築した太陽電池は,高い光エネルギー変換効率を示す。

しかしながら,Chl誘導体の光励起ダイナミクスは未だに解明されておらず,Chl誘導体を用いた太陽電池の動作原理は推定の域を超えていなかった。

そこで研究グループは,サブナノ秒時間分解吸収分光法を用いてChl誘導体の溶液状態と薄膜状態における励起種とキャリア種を実験的に同定した。また,その際に用いた酸化還元媒体であるヒドロキノン(HQ)をChl誘導体薄膜にドープすることで,キャリア寿命が増大することを見出した。

HQを加えることによって長くなったキャリア寿命が,光電流の生成によるものであることを確かめるために,酸素発生型光合成のZ-スキーム過程を模倣した有機太陽電池に HQを導入したデバイスを作成し,Chl-A層にHQを0.5%加えたデバイスが,1.55%という最も高い光電変換効率(PCE)に到達するという結果を得た。

この効率は,純粋なChl-Aをベースとしたデバイスの効率(1.29%)よりも 20%高効率であることを示しており,Chl誘導体を用いた有機太陽電池の光電変換性能の向上に結び付けることに成功した。

これは,これまで未解明であった有機太陽電池の動作機構を解明することで,性能向上の鍵となるプロセスを特定し,実際に性能向上に結び付けるできることを示した成果であり,研究所グループは,今後の有機太陽電池開発の明確な設計指針を提示すものだとしている。

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