浜ホト,GaN結晶の品質定量評価装置を発売

著者: sugi

浜松ホトニクスは,全方位フォトルミネッセンス(Omnidirectional Photoluminescence:ODPL)測定法を利用した結晶品質評価装置「ODPL測定装置 C15993-01」を開発し,8月2日より発売を開始する(ニュースリリース)。価格は1,100万円。

この製品は,ODPL測定法を利用したGaN結晶の品質評価装置。ODPL測定法とは,GaNをはじめとする化合物半導体結晶の構造欠陥や不純物の有無などの品質を数値化し,正確に評価する手法。従来,フォトルミネッセンス(Photoluminescence:PL)を利用する測定法では,GaN結晶から一方向に放出されるPLの強度や波長ごとの情報を基に品質を評価していた。

PLを利用することで非接触,非破壊,高速で品質を評価することができるが,光検出器の位置や角度,結晶に光を照射する際の条件などで測定結果が左右されるため,再現性や定量性が低いという課題があった。

このような中,同社と東北大学は,積分球を用いてGaN結晶から全方向に放出されるPLの強度を高い再現性で測定するとともに,独自の計算手法により,測定結果から内部量子効率(Internal Quantum Efficiency:IQE)を算出できることを発見した。また,GaN結晶のIQEを指標とすることで,結晶の品質を定量的に評価する手法としてODPL測定法を確立した。

今回,積分球を用いてGaN結晶から全方向に放出されるPLの強度を正確に測定するとともに,独自の情報処理技術により,測定結果からIQEを自動で算出するソフトウエアを新たに開発することで,ODPL測定法を利用しGaN結晶の品質を定量的に評価する装置の開発に成功した。

また,光学部品の配置を最適化し,積分球や分光器,光学系など,装置の構成部品をコンパクトにまとめるとともに,新開発のスライド式サンプルホルダにより結晶をセットしやすくした。

この製品により,ODPL測定法を利用したGaN結晶の品質の定量評価を実現し,品質向上に向けた研究開発の効率を高めることができるとする。今後,この製品の拡販により,GaN結晶の品質評価手法としてODPL測定法の業界標準化を図る。また,将来の量産ラインでの効率的な品質検査に向け,大型のGaN結晶ウエハーに対応した装置の開発を進める。なお,販売目標台数は,初年度6台/年,3年後に14台/年としている。

キーワード:

関連記事

  • 筑波大ら,放射線の種類で変わる結晶発光特性を発見

    筑波大学と東北大学は,Eu添加CaF2結晶にα線を照射すると,X線を照射したときよりも長い波長の光が多く発生することを世界で初めて発見した(ニュースリリース)。 シンチレータは放射線のエネルギーを光に変換する物質。その中 […]

    2025.09.10
  • 東大ら,分光法で界面水のクラスター構造を解析

    東京大学,東京理科大学,高輝度光科学研究センター,北里大学,広島大学,長崎大学は,新しいタイプの多孔性結晶を創出し,その結晶に含まれる界面水が温度や界面からの距離に依存した動的挙動を示すことを明らかにした(ニュースリリー […]

    2025.09.08
  • 静岡大ら,光を消すと結晶がジャンプする現象を発見

    静岡大学,高知工科大学,東京科学大学は,新規結晶アクチュエータの開発に成功した(ニュースリリース)。 有機分子からなる結晶は,もろく壊れやすいと認識されてきた。しかし近年,温度や光,力などの外部刺激によって結晶が曲がった […]

    2025.07.08
  • 東大ら,ナノシート酸化物半導体トランジスタを開発

    東京大学と奈良先端科学技術大学院大学は,原子層堆積法を用いて結晶化した酸化物半導体を形成する技術を開発し,トランジスタの高性能化と高信頼性化を実現した(ニュースリリース)。 データセンターやIoTエッジデバイスをインフラ […]

    2025.06.10
  • 東大ら,結晶成長における不純物の影響を可視化

    東大ら,結晶成長における不純物の影響を可視化

    東京大学と中国復旦大学は,単一粒子レベルで不純物の輸送を可視化し、結晶成長が「連続成長」と「溶融・再結晶化」に分岐することを発見した(ニュースリリース)。 結晶成長は,材料科学や工業プロセスにおいて極めて重要な現象であり […]

    2025.04.17
  • 東大,格子定数などを用いず未知の結晶構造を決定

    東大,格子定数などを用いず未知の結晶構造を決定

    東京大学の研究グループは,多相系材料に適用可能なデータ同化に基づく結晶構造決定法を開発した(ニュースリリース)。 結晶構造決定は,物質の様々な性質の理解,さらには新規材料の開発指針策定のために必要不可欠な営みとなっている […]

    2024.12.09
  • 東北大ら,量子物質が光で3ピコ秒で変化すると発見

    東北大学,名古屋大学,仏レンヌ第一大学,仏ナント大学は,モット絶縁体と呼ばれる量子物質のナノ結晶を用いることにより,巨視的な結晶対称性の変化(逆強弾性転移)が,3ピコ秒という,熱膨張を介する場合の1/100の短時間で完了 […]

    2024.09.19
  • 東工大ら,非周期結晶構造を理論的に提唱

    東京工業大学,名古屋大学,豊田理化学研究所,近畿大学は,準結晶と不整合変調構造の性質を併せ持つ非周期結晶構造を発見し,超空間の枠組みの中で準結晶と不整合変調構造を包括的に記述できることを明らかにした(ニュースリリース)。 […]

    2024.07.16
  • オプトキャリア