名城大ら,GaN面発光レーザーの変換効率20%超に

名城大学と産業技術総合研究所は,窒化ガリウム(GaN)面発光レーザー(波長420nm)にて,20%を超える電力変換効率を初めて実証した(ニュースリリース)。

窒化ガリウム面発光レーザーは,青色を中心とする可視域をカバーし,AR/VR ディスプレー,自動車用アダプティブヘッドライト,可視光通信システム,ポイントオブケア検査(ポータブル分析器などを用いて,患者の近くでリアルタイムに行なう検査)など,様々な応用が期待されている。

これまでに電力変換効率として10%台までが報告されていたが,さらなる効率改善や,生産性向上に向けた高い再現性が望まれていた。

面発光レーザーはウエハーに対して垂直方向に光を共振させるため,膜厚によって動作する波長(共振波長)が決まる。そのため設計膜厚に対して1%を切る膜厚制御性が必要となるが,従来の別の実験から把握した成長速度に基づいて素子構造を形成する方法では最大2%の差異が生じていた。

実用化されているヒ化ガリウム赤外面発光レーザーでは,「その場反射率スペクトル測定」により,素子の半導体層構造を結晶成長させながら,その反射率スペクトルから成長させた膜厚を把握し,必要な膜厚に到達した時点で成長を終了させる「その場膜厚制御」が行なわれている。今回,この手法を適用した。

適用に際し,窒化ガリウムで形成された共振器の共振波長の温度依存性を調べ,成長温度では共振波長が約 20nm程度長波長化することを見出した。その長波長化した共振波長にて結晶成長中にその場で反射率強度プロファイルをモニターすることで,必要な最終層厚(3.7λ)に到達した時点を認識する手法を確立し,そこで結晶成長を終了した。

その後,素子形成プロセスを経て,面発光レーザーを作製した。その際,高電流注入時にも発光特性が改善する,発光層直下のGaInN下地層と,単位電流密度当たりの熱放熱性が向上する,直径5µmの比較的小さな発光径も盛り込んだ。

その結果,発光径が小さい(5~8µm)素子では10mW以上の高い光出力を示し,発光径5µmの素子では 20%を超える電力変換効率を達成した。また,この面発光レーザーの設計発振波長418nmに対し,実際の発振波長は417.7nm(8µm径素子)と,共振波長制御性,すなわち膜厚制御性として,差異は 0.1%という極めて高い値を示した。

この成果により,20%を超える高効率窒化ガリウム紫色面発光レーザーが実現し,将来の生産性向上に繋がる高い再現性も実証された。研究グループは,社会実装に向けた大きな一歩だとしている。

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