東大ら,赤色蛍光グルコースセンサーを開発

東京大学,東京工業大学,マイオリッジらは,細胞内のグルコース(ブドウ糖)を可視化できる,赤色のグルコースセンサー「Red Glifon」(Red Glucose indicating fluorescent protein)の開発に成功した(ニュースリリース)。

グルコースは生物にとって重要なエネルギー源の一つとして利用されている。グルコースは,細胞内で乳酸やピルビン酸などに代謝され,最終的にATPが産生される。この糖代謝を理解するため,グルコースとその代謝産物の細胞内動態を可視化する技術開発が行なわれてきた。

研究グループはこれまでに,3色のATPセンサー「MaLions」に加え,緑色グルコースセンサー「Green Glifon」,緑色乳酸センサー「Green Lindoblum」および緑色ピルビン酸センサー「Green Pegassos」を開発している。

しかし,蛍光タンパク質型分子センサーは,上記も含めて緑色のものが多いため,細胞内でグルコースと別分子の動態を同時可視化するデュアルカラーイメージングをな行うためには,緑色以外の蛍光色のグルコースセンサーが必要だった。

今回開発した「Red Glifon」は,赤色蛍光タンパク質を基盤として構築され,グルコース濃度に応答して蛍光輝度が変化する,蛍光タンパク質型分子センサー。「Red Glifon」を細胞に発現させ,蛍光顕微鏡で観察すると,細胞内のグルコース動態を蛍光輝度の変化を通して可視化することができた。

また,グルコース,ATP,乳酸,ピルビン酸の緑色蛍光センサーと併用することで,細胞内でグルコースとその代謝産物との階層的な動態変化を同時可視化することにも成功した。

「Red Glifon」を用いた可視化解析は,人工甘味料が腸管の内分泌細胞内の糖代謝に影響を与えてホルモン分泌異常を引き起こす可能性があることや,ヒト心筋細胞の拍動変化と糖代謝変化に関連があることを明らかにした。

「Red Glifon」は,細胞内のグルコース動態を高い時空間分解能で検出することができ,バイオイメージングのための有効なツールとなる可能性があるという。

細胞内のグルコース動態を理解することは,個体レベルでの病態を解析する上でも重要であるとから,研究グループは糖尿病や心筋症などの疾患研究・薬剤探索への貢献が期待されるとしている。

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