東大ら,他の結晶形に転移する新様式を発見

東京大学,中国復旦大学,中国科学技術大学は,複数の結晶形をとる物質において,1つの結晶形から他の結晶形に転移する新しい様式を発見した(ニュースリリース)。

通常,鉄などの硬い結晶における固体・固体転移(マルテンサイト変態)は,巨大なひずみエネルギーを必要とするため,外部からの強い変形などによってのみ既存の欠陥を起点として起こると考えられてきた。

しかし,結晶・結晶転移に伴うひずみエネルギーが界面自由エネルギーと同程度であるようなソフトな結晶において,どの程度までこのような様式が保持されるのか,あるいは,外力なしの条件下で,温度の変化などによる自発的な転移の実現が可能なのかについては,ほとんど分かっていなかった。

これらの疑問を解決するためには,転移の動的な過程を微視的に観察することが不可欠。しかし,電子顕微鏡などで,結晶・結晶転移について構造的な情報はある程度取得できるが,転移の動的な過程を捕捉することは時間分解能が足りず難しい。

そこで,大きさがミクロン程度の荷電コロイドの粒子を原子と見立て,その分散系を用いて,共焦点レーザー顕微鏡観察下で,面心立方格子(fcc)から体心立方格子(bcc)への転移を,摂動を与えることなく引き起こし,その場で一粒子レベルの3次元実時間観察を行なった。

コロイド系では,動的プロセスが著しく遅くなるため,動的過程の一粒子レベルでの観察が可能となる。この実験により,従来知られていたマルテンサイト変態の様式に加え,親結晶が十分柔らかい場合には温度の変化などにより自発的に転移が進行する様式が存在することを発見した。

今回の発見は,結晶の柔らかさに依存した結晶・結晶転移の経路選択の物理的原理を明らかにするもの。これについて研究グループは,親結晶の柔らかさと欠陥を利用した固体・固体転移の制御という新たな可能性を拓く成果だとしている。

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