東北大学は,発見困難だと思われていた「死につつある活動銀河核」を発見した(ニュースリリース)。
宇宙には数多くの銀河が存在し,その銀河の中心には太陽の質量の100万倍から100億倍にも及ぶ超巨大ブラックホールが存在することが知られているが,その誕生から成長,終焉については未だによく分かっていない。
ブラックホールそのものは光を出さないが,ブラックホールの周りにガスが落ち込むと,ガスは重力エネルギーを開放し,光を放つ。このような天体を活動銀河核という。活動銀河核として明るくなった超巨大ブラックホールを観測することで超巨大ブラックホールがどのように成長してきたのかを探ることができる。その一方で,活動銀河核の終焉の現場は,長らく発見されてこなかった。
今回の発見は,活動銀河核が作り出す周辺の環境の変化を活かすことで実現した。活動銀河核は膨大かつ高エネルギーの光を出すため,活動銀河核周囲のガスは電離され,その電離領域は約3000光年にも及ぶ。また,ブラックホール周辺から噴出したジェットが1万光年にもおよぶこともしばしばあるなど,活動銀河核の特徴的な構造は超巨大ブラックホールから1万光年ほどまで広がっている。
研究グループは,このようにジェットを出しているArp 187という天体を電波で観測したデータを解析した。その結果,ジェットに特有の広がった2つの構造が見られた一方で,中心核に付随する電波が非常に暗く見えないことに気付いた。
活動銀河核の様々な物理スケールの特徴量をさらに見ていくと,100光年より小さい物理スケールでは活動銀河核の特徴が全く見られないことがわかった。これは,活動銀河核がこの約3000年以内という「最近」に活動をやめたと考えると説明できる。
いったん活動銀河核が活動をやめると,光の供給がなくなり小さいスケールから順々に暗くなるが,大きいスケールを持つ電離領域では光が3000光年ほど「寄り道」してから届くため,3000年前の活動銀河核の光がまだ観測できるのだという。
さらに,活動銀河核の現在の光度は衛星によるX線観測の結果,X線は検出されず,太陽光度の約10億倍よりも暗いことがわかった。これはArp 187内の活動銀河核は,この3000年程度で光度が1000分の1以下になったことを示すという。
研究グループは,超巨大ブラックホール周辺の分子ガス分布を調査することで,その最期がどのような環境なのかを明らかにするとしている。