産業技術総合研究所(産総研)とトヨタ自動車は,軽量フレキシブルなCIS系太陽電池ミニモジュールでは世界最高となる,光電変換効率18.6%(17セル集積型構造,受光面積68.0cm2)を達成した(ニュースリリース)。
主流である結晶シリコン系のほかの太陽電池として,CIS系太陽電池は光電変換効率が高く,すでに国内外で19%以上の変換効率が達成されており,長期信頼性にも優れるなどの特長がある。しかし,従来のCIS系太陽電池は重量が大きいガラス基板を用いているため,薄膜型太陽電池としての特色を十分には生かせていなかった。
しかし,CIS系太陽電池ではガラス基板から光吸収層に拡散し添加されるアルカリ金属が高性能化に必要だが,アルカリ金属を含まないフィルム基板ではこの拡散添加が期待できないという課題があった。
今回研究グループは,フィルム基板上にCIS系太陽電池を形成するために必要な,アルカリ金属添加制御技術を改良した。CIS系薄膜の光電変換特性の改善を行なうためASTL法を使用し,光吸収層の製膜後にもアルカリ金属の添加を行なった。
基板には靭性と弾力性に優れたフレキシブルセラミックシート(基板自体にはアルカリ金属を含有しない)を用い,多様な基板上での応用を見据えたCIS系太陽電池モジュール形成技術を検証した。データシートの記載値,またその値からさらに計算して求められた太陽電池性能パラメータは,変換効率18.6%,開放電圧12.7V(1セルあたり0.747 V),短絡電流密度34.6mA/cm2,曲線因子72.0%を得た。
今回,軽量フレキシブルな太陽電池ミニモジュールとして18%以上の変換効率を達成できたことで,CIS系材料を活用した太陽光発電の用途拡大に向けて大きな道が開けた。しかし,太陽電池の性能指標の一つである曲線因子の値は72.0%とまだ低いが,曲線因子の改善によってさらなる高性能化が期待できるという。
CIS系太陽電池研究開発に関するNEDO委託事業の2022年度末目標では,30cm角以上のモジュールで効率18%以上のほか,製造コスト35円/W以下の見通しを得ることなどがあり,研究グループはこれらの達成に向けて企業や大学などとの連携により研究開発を進めていく。
また,CIS系光吸収層とp-n接合界面の品質向上などの要素技術をさらに改善し,より高い光電変換効率の実現を目指すとしている。