NTTら,半導体でアンドレーエフ反射の観測に成功

日本電信電話(NTT),科学技術振興機構(JST),仏国立科学研究センター エクス=マルセイユ大学は,半導体を用いて電子1個よりも小さな電荷(分数電荷準粒子)のアンドレーエフ反射を観測することに成功した(ニュースリリース)。

アンドレーエフ反射は二次元電子系が低温・強磁場中で示す分数量子ホール状態において,分数電荷準粒子が界面に入射する際,電子が透過し,分数電荷を持つ正孔が反射される現象で,これまで超伝導体に特有の現象と考えられてきた。

超伝導体では2つの電子がペア(クーパーペア)を作って電流を運ぶため,電子が超伝導体に入射する際,電子のペアが透過し,電荷を保存するように正孔が反射される。超伝導体以外の物質におけるアンドレーエフ反射の可能性は1990年代に理論的に指摘されていたが,理想的な界面を作ることが難しく,実験では観測されていなかった。

研究グループは,ゲート電圧による電子密度制御によって,1つの半導体試料内に2つの異なる量子ホール状態を発現させた。この界面をもう一つのゲート電圧によって狭窄することで,微小な分数-整数量子ホール接合を形成した。

この試料では,別々の材料をつなぎ合わせて作製する接合と比べ,格段に良質(不純物などの不確定要素が少ない),かつ微小な分数量子ホール系の界面を実現することができるという。

加えて,もう一つのゲート電圧によって狭窄領域の幅を調整することで,界面のサイズを精密に制御することにも成功した。このような制御性の高い,良質かつ微小な接合により,準粒子のアンドレーエフ反射の観測が可能になった。

実験の結果,半導体において,かつ分数電荷でもアンドレーエフ反射が起こることが明らかになり,現象の普遍性が示された。分数電荷準粒子はトポロジカル量子計算への応用も期待されているという。

この成果は,分数量子ホール状態と通常伝導体の界面における電荷移動メカニズムを明らかにするもので,準粒子を操作する量子情報デバイスの実現に向けて重要な知見を与えるものだとしている 。

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