自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター(ABC)らの国際研究グループは,系外惑星WASP-33bの昼側の大気中に,ヒドロキシラジカル(OH)分子を発見した。これは太陽系以外の惑星において世界で初めてのOH検出となる(ニュースリリース)。
地球の大気では,OHは主に水蒸気と酸素原子との反応で生じる。これは,「大気の洗剤」とも呼ばれ,メタンや一酸化炭素などの生命に対して有害となりうる物質を大気から取り除く重要な役割を果たしている。
地球よりさらに熱く,大きな系外惑星であるWASP-33bでは,これまで鉄や酸化チタンのガスは検出されていたが,今回発見されたOHはこの惑星大気の中で水蒸気と一酸化炭素との相互作用を通し,大気組成を決める上で重要な役割を果たしている。このOHのほとんどは,惑星大気の高い温度により水蒸気が壊されることで生じると考えられている。
この発見は,ハワイにあるすばる望遠鏡に新しく搭載された近赤外線の高分散分光器「IRD」によって達成された。この装置は,恒星や惑星に存在する原子や分子をスペクトルの中に吸収線として検出することができる。
系外惑星が主星を公転するとき,地球に対して系外惑星の速度は時間に応じて変化する。このため,ドップラーシフトにより色がわずかに変化し,スペクトル中に含まれる原子・分子の特徴が主星によるものか,惑星によるものかを区別することができる。
惑星からの光は非常に弱いため,通常の観測では主星と惑星の光は直接に分離することができないが,この方法によって初めてウルトラホットジュピターからのOH分子に起因する信号を分離することができた。
今回,IRD独自の機能を活用することにより,系外惑星大気中のわずかなヒドロキシ分子を検出することができた。現代天文学の目標のひとつは,地球のような惑星を探すことにある。今回は極端に熱い惑星が対象だったが,研究グループでは更なる開発を進めることで,より冷たい惑星,最終的には第二の地球の大気を調査できるようにしたいとしている。