ウシオ電機と島根大学は,222nm-UVCの眼への照射に対する安全性動物試験(ラット)を実施し,角膜炎を引き起こさない222nm-UVCの最大照射量(暴露限界値)が,3,500~5,000 mJ/cm2の間にあることを示した(ニュースリリース)。
222nm-UVCは,ウイルス不活化に効果的であるため,COVID-19のような感染症対策への利用に期待されている。
研究では主に222nm-UVCを含むUVC,UVB紫外線によるラット角膜損傷の波長依存性の評価を行なった。さまざまな波長の紫外線(311,254,235,222,207nm)照射によって誘発された角膜損傷をラットで評価したところ,207nmおよび222nm-UVCの場合,照射24時間後に角膜損傷を引き起こすのに必要なエネルギー量はそれぞれ15,000mJ/cm2および5,000mJ/cm2であり,一般的な殺菌灯として用いられる254nm-UVC(20mJ/cm2)のそれぞれ750倍および250倍だった。
照射直後のシクロブタンピリミジンダイマー(CPD,紫外線によるDNA損傷マーカー)の局在によって示される角膜への組織深達度は波長に依存していた。具体的には,311nm-UVBおよび254nm-UVCは角膜内皮まで到達,235nm-UVCは角膜実質の中間まで到達するのに対し,222nmおよび207nm-UVCは角膜最表層にのみ到達することが分かった。
222nm-UVCを照射した角膜最表層で観察されたCPDは,この層が照射後数時間以内に生理学的な代謝サイクルによって脱落するのに伴い,12時間後までには消失した。222nm-UVCの角膜損傷を誘発するための最小線量は,ACGIHによって勧告されているTLVよりも200倍以上高い5,000mJ/cm2であることが分かったという。
これにより,207nmおよび222nm-UVCの安全性のメカニズムは,これらの光が角膜最表層までしか到達しないこと,生理学的代謝サイクルの過程で12時間以内に最表層が脱落することによって説明され,これまで考えられていたよりも角膜への安全性が高いことが示されたとする。
これらの研究結果は,222nm-UVCがヒトの眼に対しても安全性が高いことを示唆しており,今後のさらなる検証や議論が望まれるとしている。